独自縮減の再検討で財源確保を


2、道政上の諸課題について

(1)行財政改革の取り組みについて
1、収支不足対策について
中司議員 道財政の中長期収支試算のローリング結果では、平成26年度まで毎年500億円近くの収支不足が見込まれているが、どう解消するのか。

高橋知事 道税収入は法人二税を中心にした税収の伸び悩みに加え、金利の動向や後期高齢者医療制度の創設などを考慮するとさらに厳しさを増す。行財政改革の推進事項の前倒しや新たな対応策の検討はもとより、歳入・歳出両面で聖域を設けることなく検討する。歳出面では新たな道債発行のさらなる抑制を検討し、義務的な経費を含めあらゆる費目について徹底した見直しを行う。

2、給与問題について
(1)独自縮減について
中司議員 2年度にわたる給料の10%カットなどの独自縮減措置は、高かった給与の是正に過ぎない。知事は「2カ年度限りの措置」との方針を示しているが、多額な収支不足への新たな対応策を検討するなかで、給与問題についてはどう考えるのか。

高橋知事 独自縮減措置は不足する財源を確保するため、道財政の立て直しに向けた取り組みとして、職員の理解と協力を得て実施している。職員給与については道民の理解が得られるよう、不断に見直しを行う必要がある。

(2)技能労務職員の給与について
中司議員 知事部局で約七百人、教育庁で1,000人以上の技能労務職員がいる。一般事務職と同じ給料表を適用し、「わたり昇給」を行っているが、どう対応するのか。

高橋知事 本年7月に示された総務省の通知の趣旨を踏まえ、年度内を目途に見直しに向けた基本的な考え方や取り組み内容を明らかにした「技能労務職員の給与等の見直しに向けた取扱方針」を策定する。

3、職員数適正化計画について
中司議員 平成17年度から26年度までの10年間で職員30%削減の目標を立てているが、27年4月時点での職員数が明らかにされていない。これまでの進ちょく状況と今後の取り組みをどう考えているのか。

高橋知事 計画目標は17年度から26年度までの10年間で職員を約5,800人減すると設定した。19年4月までの進ちょく率は1,973人、34%で、目標達成に向けて最大限努力する。

国の直轄事業と連携・一体化を

(2)北海道洞爺湖サミットについて
1、事業計画について
中司議員 道・市町村などの事業計画と国の直轄事業を連携・一体化し、相乗効果を高める必要がある。事業推進に当たっての基本的な考え方を伺う。

高橋知事 北海道洞爺湖サミット道民会議で事業計画「2008年夏、北海道が未来の扉(とびら)になる」をまとめた。この計画に基づき各種事業に官民一体となって総合的に取り組む。国が開催する国際会議であり、国に対しても積極的に提案を行い、連携を強め、事業計画の効果的な推進に努める。

2、ジュニアエイトサミットについて
中司議員 札幌市や千歳市ではサミットと同時に開催される「ジュニアエイトサミット」の誘致を表明しているが、どう対応するのか。

高橋知事 札幌、千歳両市長から協力要請を受けた。国に対し本道開催を要請したが、道内には世界の若者たちに知ってもらいたい自然環境や文化などが数多くあり、積極的に協力していきたい。

六連携地域と支庁所管区域の関係は

(3)新しい総合計画について
1、資金量について
中司議員 これまでの長期計画では計画達成に必要な資金量を策定している。新しい長期計画では資金量を明示をしていないが、その理由は何か。

高橋知事 新しい総合計画は、めまぐるしく変化する経済社会情勢へ柔軟に対応し、道民と共有できるシンプルで分かりやすい計画にすることが基本。長期的視点に立って目指すべきビジョンと、実現に向けた戦略を明確に示すことに重きを置いて策定する。このため資金量は掲載しない。必要な財源の確保に努め、計画の着実な推進を図っていく。

2、大学院の整備について
中司議員 グローバル化が進む中、国際競争に打ち勝つためには高等教育、とりわけ大学院の整備が重要だが、計画ではどのように考えているのか。

高橋知事 人づくりや科学技術などをテーマとする分野を設定し、高度な産業人材の育成・確保の方向性を示した。この基本方向に沿って、国や大学との連携を密にし、大学院も含めた高等教育機能の整備促進などを通じ、時代の要請に応える人材の育成に努めていく。
3、道州制の見通しなどについて
中司議員 計画終了年度の平成三十年には、道州制や市町村合併の進展で地方分権が相当進んでいると思われるが、それぞれの見通しをどうとらえているのか。

高橋知事 道州制はわが国を中央集権から地域主権へ抜本的につくりかえるものであり、実現にはなお時間を要すると考えている。道としては道州制のフロントランナーとしての役割をしっかり果たしていく。基礎自治体である市町村が行政体制の充実・強化を図る手立てとしては、合併が最も有効な手段と考えている。道内各地でどのような地域づくりを目指すかという論議が活発に行われ、合併の推進が図られるように最大限の努力をする。

4、連携地域について
中司議員 これまでの地域生活経済圏に代わって、おおくくりで6つの連携地域という考え方が打ち出された。この区分は支庁の所管区域や広域市町村圏の圏域区分、自治体病院の広域化・連携構想区域とどのような関係になるのか。

高橋知事 連携地域のエリアの中には、広域市町村圏や一部事務組合、保健医療福祉圏など様々な地域単位が存在しており、政策目的によっては連携地域のエリアを越えるつながりや地域設定も想定される。こうしたさまざまな地域を単位として、広域的・多層的な連携・相互補完を強めながら、きめ細やかな地域政策の展開を図り、持続可能で活力ある地域づくりを進めていく。

支庁制度改革は慎重に進めよ

(4)支庁制度改革について
中司議員 わが会派は支庁制度改革については「慎重に進めるように」との申し入れをしているが、改めて見解を伺う。

高橋知事 支庁制度改革は社会経済環境や地方分権改革の進展に的確に対応するため、取り組んでいく必要がある課題。昨年6月に「新しい支庁の姿(骨格案)」まとめたが、市町村との意見交換では地域に対する影響を懸念する声が寄せられた。このため現時点での検討状況を示し、論議を深めることにしているが、道案の取りまとめに向けてさらに検討を進めていく。

合併推進のために市町村意向調査を

(5)市町村合併について
1、合併意向調査について
中司議員 合併を強力に推進するため、市町村への意向調査を行ってはどうか。

高橋知事 地域での論議が進むように、市町村の意向や合併の動きをきめ細やかに把握し、地域の実情に応じた助言をしていきたい。市町村を取り巻く状況の推移などを見極めながら、意向調査の実施などを検討したい。

診療所への財政支援措置は不十分

(6)新市町村立病院の経営健全化について
1、自治体病院等広域化・連携構想について
中司議員 北海道医療対策協議会が打ち出した広域化・連携構想を実現するために、道としてどう取り組む考えなのか。

高橋知事 この構想は「道から市町村、住民への提案」としてまとめる。設置される検討会議に事務局として参画し、情報提供や助言を行うなど積極的に対応する。

2、診療所の充実について
中司議員 構想の実現には、病院から診療所への転換がカギだが、診療所の経営実態が明らかではなく、財政支援措置が十分ではない。こうした課題にどう取り組むのか。

嵐田副知事 市町村直営で、一定の診療実績がある36診療所の平成17年度収支調査では、ほとんどの診療所で交付税措置額を上回る一般財源を措置して、収支が保たれており、厳しい経営環境に置かれている。地方財政措置の拡充を国へ要望し、経営改善相談に応じるなど適切な助言をしたい。

税軽減措置提案にどう対応するのか

(7)道州制特区の第二次提案について
1、第二次提案に向けた基本的な考え方について
中司議員 第二次提案とその実行に向けてどう取り組むのか。

高橋知事 国への新たな提案に向けては、今月中の答申を目指して道州制特区提案検討委員会で「地域医療対策」「水道」「食品表示」などを集中審議している。年内を目途に国へ提案し、「政・官」一体となって実現に向け全力で取り組む。

2、税制に関する提案について
中司議員 道民提案の中には税の軽減措置に関するものがあるが、どう取り組んでいくのか。

嵐田副知事 誘致企業に対する税制面の優遇措置などの提案が寄せられているが、単なる税財源の優遇措置を求めるのではなく、本道の自立発展を目指すという視点で国への提案を検討する。

条例の必要性と期待される効果は

(8)循環型社会の形成に関する条例について
中司議員 道が検討している条例の必要性、基本的な視点、効果についてどう考えているのか。

高橋知事 道民や事業者、行政の果たすべき役割などを明確化し、関連する施策を総合的、計画的に推進することを基本的な視点にしている。廃棄物の発生・排出抑制など3Rの推進、リサイクル関連産業の振興、バイオマスの利活用などの関する規定を盛り込むことで、北海道らしい循環型社会の早期実現が図られると考えている。

環境保全と観光をどう調和するのか

(9)知床世界自然遺産について
中司議員 毎年、多くの観光客が訪れるが、環境への悪影響を極力抑えることが必要だ。知床の環境保全と観光資源活用についてどう調和を図るのか。

高橋知事 今後さらに「知床ルール」づくりを積極的に進め、運用や普及啓発を通じて原生的な自然環境の保全と人々に感銘を与える質の高い利用の両立を目指していく。

無形文化遺産にアイヌ文化登録を

(10)世界文化遺産などへの登録について
1、常呂、標津の遺産の遺跡などについて
中司議員 常呂、標津の遺跡や函館市の大船遺跡などの世界文化遺産への登録実現にどう取り組んでいくのか。

高橋知事 本道の文化価値を内外に情報発信することは、活力ある地域づくりを進める上からも大変意義がある。道教委や地元市町村との連携に一層努め、実現に向け努力する。

吉田教育長 道南地域の縄文遺跡群は北東北三県と調整して12月中を目途に、常呂遺跡と標津遺跡群は9月末に国へ提案書を提出する。知床世界自然遺産に続く世界遺産として道民の期待も大きく、積極的に取り組みを進める。

2、アイヌ文化について
中司議員 アイヌ文化を後世に伝えるため、ユネスコの無形文化遺産への登録を目指すべきだ。

高橋知事 国の重要無形民俗文化財に指定された「アイヌ古式舞踊」をはじめとするアイヌ文化が、無形文化遺産として登録されるよう、登録に向けて文化の保存・伝承に一層努めていく。

医育大の定員増や奨学金の充実を

(11)地域医療問題について
1、医師確保対策について
(1)奨学金制度への取り組みについて
中司議員 医育大学の定員増の働きかけや奨学金制度の充実に向けどう取り組むのか。

高橋知事 平成20年度から札幌医大は奨学金制度と連動した地域枠5人、旭川医大は奨学金制度と連動はしないが、道東、道北の高校卒業生を対象にした地域枠10人を設ける。定員増については国から最大15人の増員が可能とされ、3医育大学に定員増の検討を要請した。札幌医大は20年度からの増員が可能であり、実現に向けて鋭意、協議する。

(2)即効性のある奨学金制度について
中司議員 1年でも早く効果が生じるように、奨学金制度は現在の学部在校生や大学院生も対象とすべきではないか。

高橋知事 医師不足の早期改善のために有効な手立てと考えられる。医療対策協議会医師養成検討分科会の協議結果を踏まえながら、十分検討していく。

2、小児科医療の重点化計画について
中司議員 道が公表した小児科医療の重点化計画素案では13圏域を設定しているが、基本的な考え方と重点化病院の役割はどのようになっているのか。

高橋知事 13圏域は地域で入院を必要とするレベルの小児科医療がおおむね完結し、小児二次救急医療を確保の二条件を満たす地域単位として設定している。重点化病院は一定数以上の小児科医師を確保し、24時間体制で救急医療に対応するなど中心的な役割を担う。

3、産科医療の重点化について
中司議員 産科医療の重点化の取り組みはどうなっているのか。

高橋知事 ハイリスク分娩(ぶんべん)や正常分娩ができるだけ身近な地域で、安全安心に出産できる体制を構築する必要がある。道医療対策協議会分科会の協議結果などを踏まえて、年内には「北海道周産期医療システム整備計画」を見直す。

介護サービスの相談は道の責任で

(12)介護保険制度について
中司議員 コムスンの事業者指定取り消しに伴い、利用者からはスムーズなサービス移行が行われるのか不安の声を聞いている。相談には道が責任を持って対応すべきだ。
高橋知事 市町村や各保健福祉事務所できめ細かく対応してきたが、今後ともサービス事業所指定の際の厳正な審査や指導に努め、サービスの確保に万全を期す。

目標数値におおもとの目標を掲げよ

(13)北海道経済活性化戦略ビジョンについて
1、基本的な理念について
中司議員 北海道経済活性化戦略ビジョンの基本的な理念について伺う。

高橋知事 本道経済の自立と将来にわたる活力の維持には、民間主導の自立型経済構造への転換と、厚みと広がりのある産業構造の構築を早急に図ることが必要。その手立てや手順を明確にし、重点的かつ集中的に取り組む施策を一つにまとめた。

2、目標について
中司議員 取り組みの柱ごとに約60の目標数値を設定しているが、道内総生産や道民所得などの目標を掲げてはどうか。

高橋知事 大きな目標は目指すべき姿として、「個性あふれる元気な地域経済の実現」「力強い経済構造の実現」など四つを掲げたが、製造業のウエイトなどの指標も掲げていきたい。

2つの条例を統合した成果は何か

(14)北海道産業振興条例について
1、条例の狙いなどについて
中司議員 北海道産業振興条例は北海道企業立地促進条例と北海道創造的中小企業育成条例を統合したものだが、どのような成果が期待できるのか。

高橋知事 自立型経済構造への転換のためには、「道内経済をけん引する産業の発展」と「地域経済活性化」を図ることが重要な課題と認識している。このため企業立地の促進と中小企業の競争力強化を推進する新しい条例を制定するもので、相乗効果により産業構造の高度化が一層進展するよう取り組みたい。

継続的助言支援への取り組み体制は

(15)中小企業地域資源活用プログラムについて
1、助言支援体制について
中司議員 プログラムを成功させるためには継続的な助言支援体制が不可欠だが、どう取り組むのか。

高橋知事 中小企業基盤整備機構北海道支部の北海道地域支援事務局や地域資源活用応援団の各機関、試験研究機関などとの連携、北海道中小企業総合支援センターのコーディネート機能などを十分に活用し、総合的な支援体制で取り組んでいく。

優遇措置の道内取り組み状況は

(16)企業立促進法に基づく基本計画について
中司議員 計画に指定されると優遇措置が受けられるが、道内の取り組みはどのようになっているのか。

高橋知事 道と北見市が基本計画を作成し、国の同意を得られるように事前協議を進めている。このほか苫東地域、釧路・白糠地域で基本計画の作成作業を進めている。支援措置の一つである課税特例の対象に食料品製造業や宿泊業が入るように、国へ要望している。

道の立入検査のあり方を改善せよ

(17)食の安全安心について
1、業界への指導について
中司議員 JAS法や食品衛生法違反事件が相次いだが、業界自らが業界全体の安全安心対策に積極的に取り組むように、道としても強く指導すべきだ。

高橋知事 消費者の信頼を回復するためには、企業倫理の確立、関係者のコンプライアンス意識の徹底が重要。食品関係者に文書を出し、緊急のセミナーを実施した。今後も食の安全・安心セミナーの開催し、すべての支庁で研修会を開催する。

2、立入検査のあり方について
中司議員 道の立入検査のあり方も改善するべきと考えるがどうか。

高橋知事 保健所の定期立入調査で賞味期限、表示設定方法を確認し、庁内担当部局や北海道農政事務所、保健所などの関係機関が緊密に連携とりながら、JAS法に基づく個別の立入検査を適切に実施していく。

活気ある農業・農村の構築を

(18)農業問題について
1、魅力ある農業について
中司議員 持続的に発展する、活気ある農業・農村の構築にどうように取り組んでいくのか。

高橋知事 平成18年に策定した第3期北海道農業・農村振興推進計画を着実に推進している。環境と農地の利用集積など各種政策を担い手に集中して、生産性の高い農業経営を確立し、アグリビジネスの一層の推進、海外市場の開拓など、魅力ある農業・農村づくりに全力を尽くす。

2、農地政策の見直しについて
中司議員 国は農地法改正など抜本的な農地政策の見直しに取り組もうとしているが、この状況をどう受け止めているのか。

高橋知事 本道の農地の権利移動は売買が一定の割合を占めるなど、都府県とは異なる特徴がある。農地制度の見直しにあたり、本道の実情に即したものになるよう国に主張していく。

3、日豪EPA交渉などについて
中司議員 WTO交渉はまだまだ厳しい状況が続き、日豪EPA交渉も予断を許さないが、どのように取り組んでいくのか。

高橋知事 WTO農業交渉は9月3日から再開されたが、適切な国境措置の確保などについて最終局面で国の最大限の努力を期待している。日豪EPAは引き続き本道の重要品目が関税撤廃の対象から除外されるよう、断固として国に働きかけていく。

現時点での収支改善の見通しは

(19)道営競馬について
中司議員 道営競馬の収支改善について現時点での見通しは。
高橋知事 産地との連携を一層強め、場外発売体制の充実や競馬場の集約化を行い、売上の拡大とコンパクトな運営で開催経費を収入の範囲内に収めて、平成22年度までに単年度収支の均衡を図りたい。

道産の水産物にエコラベル取得を

(20)水産物の輸出対策について
中司議員 国際競争に打ち勝つために、道産水産物のエコラベル取得を進めるべきだ。

高橋知事 輸出促進のためには欧米市場で急速に浸透している「水産エコラベル」の取得が必要不可欠と考えている。秋サケやホタテはエコラベル取得に向けた取り組みを開始しており、早期導入を推進していく。