●令和2年第1回定例道議会 自民党・道民会議 代表質問答弁要旨

田中 芳憲 議員(たなか よしのり) (恵庭市選出)

tanaka
経済的な影響の緩和にも最大限の努力を求める

新型コロナウイルス感染防止対策の強化を要請

昭和31年10月31日、芦別市生まれ。札幌大学経済学部卒業。北海タイムス記者、恵庭市議3期を経て、平成21年道議会議員初当選。4期目。現在、党道連政務調査会長、同財務副委員長、道議会経済常任委員、同人口減少問題・地方分権改革等調査特別委員など

 第1回定例道議会は2月27日から3月25日まで開かれ、鈴木直道知事にとって初の当初予算編成となる総額約2兆8201億円の令和2年度一般会計予算案、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対策費を盛り込んだ令和元年度、2年度補正予算案を含む議案100件と、意見書案5件を原案通り可決した。ウイルス感染拡大を受け、開会直後の28日から3月10日までの12日間を休会とし、計6日間で行う代表質問と一般質問を、2日間に短縮するなど、異例の対応がとられた。

輝き続ける北海道の実現に全力を

1、知事の政治姿勢などについて

(1)新年度に臨む知事の政治姿勢について

田中議員  知事は初の本格予算の中で2030年に向けたロードマップを示し、新年度はウポポイのオープン、空港一括民間委託の開始など、北海道の飛躍につながる動きが目白押しとなっているが、新型コロナウイルス感染拡大により、経済の先行きを懸念する声も広がっている。知事は「世界の中で輝き続ける北海道の実現に向けて全力を尽くす」との決意を示したが、政策理念や政策検討の方向性が予算にどう反映されているのか。

鈴木知事 関係団体との対話を重ね、職員と直接議論を行い、政策を練り上げた。子育ての先進地を目指す取り組みや、新技術を活かして広域分散型のデメリットを克服する取り組みを進めていく。

(2)新型コロナウイルス対策について

田中議員 新型ウイルスが世界各地に拡大し、道では全国に先駆けて小中学校等の一斉休校の要請、緊急事態宣言、週末の外出自粛要請など、感染拡大抑止に全力で取り組んでいる。休校期間中の子供へのサポート、追加の予算措置、診療体制の確保にどう取り組んでいくのか。

鈴木知事 道内小中高・特別支援の全校で一斉臨時休校を実施し、児童生徒、教職員の健康観察の徹底、校内の消毒を行っている。児童生徒の心身や学習のケア、分散登校や来校相談などの取り組みを進め、必要な予算を確保していく。

田中議員 感染症の拡大は観光、飲食サービスや卸・小売り、交通運輸サービス、イベント開催など、多くの分野で急激な需要の低下を招いており、中小企業の経営や雇用にも深刻な影響を及ぼしている。国は緊急対応策を発表したが、国と連携しながら経済的な影響の緩和に最大限努める必要があると考える。どう対応する考えなのか。

鈴木知事 私から安倍総理に対し、中小企業に対する融資制度や労働者の休業補償、消費喚起や観光需要の回復に向けた支援策を講じるよう強く求めた。道としても必要な対策を取りまとめ、企業の事業継続や雇用の安定に取り組んでいく。

(3)第2期創生総合戦略について

田中議員 道民の道外転出は年8000人前後で推移する一方で、外国人の流入超過が年々大きくなっており、全体としては転出超過が2018年で3700人程度となっている。道が検討を進める第2期創生総合戦略では、転出超過の状況を2023年度を目途に均衡させることを目標としているが、どう取り組むのか。

鈴木知事 食や観光を中核に稼ぐ力を高め、魅力的な「しごと」を創造するとともに、地域や企業との連携を強化しながら、若者や女性が働きやすい職場環境づくりや新規学卒者の道内就職の促進を進めていく。

(4)職員の子育て支援について

田中議員 子育て中の道職員の休暇取得状況は女性の方が男性より2.6日上回っており、男女共同参画型の子育て支援環境の実現に取り組むべきと考える。道の子育て支援行動計画の改定や計画に基づく取り組みに、どう反映させていくのか。

鈴木知事 育休取得率の目標を10%から20%に引き上げるとともに、男性職員の育児参加を適切にマネジメントしたり、育児休業の体験談を発信することなどで職場全体での意識変革や機運醸成を図る。

(5)行財政運営について

田中議員 道の行財政は厳しい状況が見込まれており、災害時などの備えとなる財政調整基金の残高が98億円にとどまり、収支不足額が昨年の見込みから拡大し290億円となった。行財政運営方針が来年度で最終年を迎えることから、次期方針の検討に着手する必要がある。行財政改革にどう取り組むのか。

鈴木知事 令和2年度までを推進期間とする運営方針に基づき、業務改革の推進や財務体質の改善を進めている。財政健全化に向けた取り組みに加え、総合的視点から行政経営のあり方の検討を進める。

(6)道の内部統制について

田中議員 北海道150年記念事業の一環として実施されたイベント「キタデミー賞」に関連し、不適切な事務処理が明らかになったが、道のガバナンスに重大な欠陥があることを示している。内部統制制度の整備に、どう反映させていく考えなのか。

鈴木知事 今回の不適切な事務執行は全職員が重く受け止め、反省し、信頼回復に努めなければならない問題である。内部統制制度は財務、文書管理、情報管理を対象としているが、本事案を踏まえ、実行委員会等の業務も対象とした。適正な業務執行の確保を図り、道民の信頼に応える道政運営を進めていく。

(7)観光振興税について

田中議員 観光振興税に関する懇談会は「道税を100円とし、市町村が独自に宿泊税を導入する場合は、条例を定めて税額を設定することが望ましい」とする考え方をまとめた。道は明確な考え方を示していないが、どう対応していくのか。

鈴木知事 税財源を活用して取り組むべき施策や、公平・中立・簡素という税の原則に立った複数の税額案をたたき台として示した。道内全市町村と協議を進め、方針を取りまとめる。

(8)JR北海道の経営再生について

田中議員 国によるJRへの財政支援が来年度末までとなっていることを踏まえ、道はJRへの支援のあり方について提言案を取りまとめた。全道規模の利用促進運動に率先して取り組むとともに、道内企業にも具体的な行動を働きかけることが重要と考える。どう取り組むのか。

鈴木知事 ノーカーデーなどの取り組みを全庁的に進め、経済団体や企業にはより一層の取り組みを求めるなど、鉄道の利用促進を加速していく。

(9)道内空港の一括民間委託について

田中議員 道内7空港の一括民間委託がスタートすることを踏まえ、道は航空ネットワーク拡充に向けた行動計画の策定を進めている。旅客需要を地方に分散させることにより、道内の全空港を一つの空港のように機能させる「大北海道空港」を目指しているが、どう実現させるのか。

鈴木知事 路線誘致や複数空港の利用促進を展開するとともに、民間委託を行わない空港の機能向上にも取り組む。運営事業者の北海道エアポートとも連携を図りつつ、道内13空港全体の活性化に向け取り組んでいく。

(10)就職氷河期世代への支援について

田中議員 国は、昨年末に「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」を策定した。非正規雇用労働者の割合が全国より高い本道の実情にかんがみ、道も積極的に取り組む必要がある。社会人中途採用機会の拡大にどう取り組むのか。

鈴木知事 職務経験を不問とする中途採用試験を、来年度から新たに実施する。国や道、経済団体、労働団体などで構成をする「就職氷河期世代活躍支援プラットフォーム」を設置する。

(11)原子力防災訓練について

田中議員 道は厳冬期における事故発生を想定し、2月に原子力防災センターでの防災訓練を実施した。さまざまな事態を考慮した訓練を繰り返し実施する必要があるが、緊張感の低下やマンネリ化を懸念する声もある。 訓練の成果や課題を今後にどう活かしていくのか。

鈴木知事 雪崩など雪害との複合災害を想定し、約380の関係機関、住民約1万人が参加した。事前にシナリオを開示しないブラインド方式の訓練、実動訓練では専用アプリを活用したバスの動態管理やドローンの活用にも取り組んだ。成果や課題を整理し、防災対策の一層の強化に取り組む。

ウポポイの意義と魅力を世界に発信せよ

(12)コンパクトなまちづくりについて

田中議員 道内の市町村では人口減少を踏まえ、コンパクトなまちづくりを進めている。防災の観点からもコンパクトシティ化は急務であり、国では社会資本整備審議会の都市計画基本問題小委員会において対策を検討している。道も基本的な考え方を市町村に示すべきと考えるが、見解を伺う。

鈴木知事 市町村が抱える課題や国における法改正の動向などを踏まえ、災害に強いまちづくりや地域交通の連携の視点を加えた基本方針の見直しを行い、安全・安心で魅力的なまちづくりを推進していく。

(13)クルーズ船の誘致について

田中議員 道はインバウンド加速化戦略の一環としてクルーズ船の誘致を進めることとしており、昨年末にクルーズ船誘致方針を策定したが、船内で大規模な感染症の発生を想定した受け入れ体制整備等の考え方がほとんど盛り込まれていない。早急に検討すべきと考えるが、どう対応していくのか。

鈴木知事 新たに設置する実務者会議において情報共有や受け入れ体制について検討を急ぐなど、感染拡大防止対策の窓口である保健所を含めた関係機関と連携を強化していく。

(14)東京五輪について(略)
(15)民族共生象徴空間について

田中議員 アイヌ文化の復興に関するナショナルセンターとして白老町にオープンする「ウポポイ」の意義と魅力を国内外に積極的に発信する必要があるが、認知度向上や、開設効果の全道への波及・拡大に向け、どう取り組んでいくのか。

鈴木知事 スポーツイベントなどでアイヌ文化の魅力を伝えるとともに、ウポポイ周辺において全道各地域の魅力を発信する賑わいを創出する。また、アイヌ文化や観光資源を結ぶ広域周遊ルートの形成に取り組む。

(16)縄文世界遺産登録について

田中議員 道が世界遺産登録を目指している「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、1月にユネスコに推薦書が提出された。約1年半にわたる審査が行われ、登録の成否は2021年とされる。遺跡の魅力発信や価値を継承する人材育成が重要になる。どのように取り組むのか。

鈴木知事 9月頃の現地調査に向け、万全の準備を整えるとともに、縄文文化の価値や魅力を多言語で紹介した映像の制作や主要交通拠点でのPRを行い、国内外への情報発信を強化する。

(17)温室効果ガス排出削減について

田中議員 令和2年度に温室効果ガス排出量を、平成2年度の水準から7%削減する道の目標達成は、極めて難しい状況にある。国は2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするよう呼びかけており、CO2を地中などに封じ込める技術CCSの導入や再生可能エネルギーの活用などを通して、排出削減に積極的に取り組む必要があると考えるが、見解を伺う。

鈴木知事 「地球温暖化対策推進計画」の見直しにおいて、脱炭素社会を見据えた取り組みの方向性を示すとともに、再生可能エネルギーや森林吸収量の活用などにより、排出量実質ゼロを目指していく。

(18)医師確保対策について

田中議員 道は医育大学の地域枠を活用した医師の養成や、勤務環境の改善による勤務医確保により、医師の地域偏在の是正を図ることとしている。地域枠制度の充実のための検討を進める必要があるが、どう取り組むのか。

鈴木知事 大学からの医師派遣枠の増員や派遣期間の制限の見直し、退職を控えた医師のあっせん、初期研修医と指導医のネットワークづくりによる定着、地域枠制度の貸付枠維持の働きかけのほか、総合診療医の養成、医師の勤務環境改善を進める。

(19)児童相談体制の強化について

田中議員 昨年度の全国の児童虐待相談件数は、前年度から約2万6千件増え、5万9850件で過去最多となった。神戸で2月、助けを求めてきた小6女児を児相職員が追い返したことが報じられ、相談対応のあり方が問われている。国の虐待防止対策体制総合強化プランなどを踏まえ、児相機能の強化を進める必要があると考えるが、見解を伺う。

鈴木知事 令和4年度に向けて児童福祉司などの専門職を計画的に増員することとし、新年度45人の増員を図るなど、相談体制の強化を着実に進めていく。

2、教育問題について

(1)小学校教育の充実について

田中議員 4月から、小学校で新学習指導要領が全面実施される。移行期間の2年間、校内外の研修などを通して準備を進めてきたが、各学校における実施状況をしっかり把握し、課題に適切に対応していくことが求められる。少人数学級の編成といった指導体制の整備と併せ、新学習指導要領の定着にどう取り組んでいくのか。

佐藤教育長 英語教育やプログラミング教育の取り組み支援、指導力の優れた教員による巡回指導、実践成果の普及を行ってきた。新学習内容をきめ細かく指導するため、35人学級を3年間で全小学校3、4年生へ拡大するとともに、GIGAスクール構想により整備される、1人1台パソコンの効果的活用に努める。

(2)学校における働き方改革について

田中議員 道教委では教員の長時間勤務を解消し、教育の質を高めるための働き方改革に取り組んでおり、勤務時間の上限やアクション・プランを、方針として位置づけるため、条例改正を提案している。出退勤管理システムの本格導入や業務改善の手引書の普及啓発により、教員の働き方への意識を変革していく必要があると考えるが、どう取り組んでいくのか。

佐藤教育長 新年度から手引書を活用して研修会を開催するとともに、幹部が個々の学校に出向くなどして業務改善を進める。道立学校においては勤務状況を定期的に公表し、勤務時間縮減の実効性を確保するとともに、市町村教委への出退勤管理システムの導入を積極的に進める。

指摘

 政策推進のための職場づくりについて、キタデミー賞をめぐる一連の経緯を見ると、背景に風通しが悪く、部局間の連携が悪いという道庁の組織風土があることを重く受け止め、その改善に危機感を持って取り組むべきであることを指摘しておく。
 新型コロナウイルス対策について、関連予算を機動的に活用し、国や市町村、関係機関と一体となってあらゆる対策を講じる旨の答弁があったが、医療体制の整備、PCR検査の円滑な実施、子供の学習支援や保護者の負担軽減など、しっかりとした取り組みが求められる。
 行財政運営について、人口急減や情報通信技術、グローバル化の進展など、従来の発想では対応できない課題が迫っており、これらに対応できる体制を検討することが重要になる、という点を十分に踏まえる必要があることを強く指摘する。  道の内部統制について、キタデミー賞をめぐる不適切な事務処理を真摯に受け止め、内部統制事務にしっかり取り組む考えがあるのであれば、実行委員会方式で実施する事務も対象となることを内部統制基本方針案に明記すべきだ。引き続き予算特別委員会で議論してまいりたい。
 小学校教育の充実について、学力向上を図るためには、道教委のサポートや少人数学級編制の拡大など、指導体制の一層の充実が求められる。臨時休校で学習できなかったカリキュラムについては、各学校において工夫し消化していく必要があり、教員の働き方改革を進めながら対応するよう指摘しておく。

※佐藤教育長は4月4日急逝されました。
 謹んでお悔やみ申し上げます。