●平成31年第1回定例道議会 自民党・道民会議 代表格質問答弁要旨

岩本 剛人 議員(いわもと つよひと) (札幌市清田区選出)

miyoshi
被災地域の暮らし、産業基盤の再建に総力を挙げる考えを示す

胆振東部地震復旧事業の加速化を求める

昭和39年10月19日、札幌市豊平区生まれ。清田高校、淑徳大学社会福祉学科卒業。石狩開発勤務を経て、平成11年道議会議員初当選。5期目。北海道議会議会運営委員長、総務常任委員長、食と観光対策特別委員長、自民党道連幹事長など歴任。現在、自民党北海道参議院選挙区第二支部長など。

 第1回定例道議会は2月15日から3月6日まで開かれ、道政運営の基本となる経費を中心とした、いわゆる骨格予算として編成された総額2兆6097億円の平成31年度一般会計予算案、30年度補正予算など、予算案34件と条例案58件、その他の案件13件が提案、議決された。2月20日の自民党一般質問(代表格)では、岩本剛人道議が地震災害対応、外国人材の受け入れ、民族共生象徴空間の開設準備、統合型リゾート施設に関する是非などについての見解を、高橋はるみ知事にただした。

災害に強い北海道づくりに全力を

1、道政上の諸課題について

(1)北海道胆振東部地震災害への対応について
1.災害復旧の早期実現

岩本議員 地震からの復旧を急ぐため、道は国の追加補正措置に呼応した追加予算を提案し、来年度予算案についても関連経費の計上、実施体制の強化などの姿勢を明らかにしている。建設業界では人手不足が深刻化し、工事に遅れが生じる事例も報じられているが、住民ニーズに配慮した一日も早い被災地の復旧に向けて、どのように取り組むのか。

高橋知事 地域外の建設企業の活用や技術者の専任要件を緩和した「地震災害復旧特例共同企業体」制度の活用、早期の入札契約や資機材調達に向けて連絡調整会議を立ち上げ、工事の円滑化を図るなど、復旧・復興に全力で取り組んでいく。

2ー1.胆振3町の復興計画との関連

岩本議員 特に大きな被害を受けた厚真、安平、むかわの3町では、早期の復旧・復興に向けて復興計画を策定する動きがあると聞いている。道が取りまとめた復旧・復興方針案と3町の復興計画をどう位置づけ、対策を推進していくのか。

小野塚総合政策部長 地域の実情やニーズを伺いながら職員派遣などの人的支援、助言や情報提供を積極的に行うなど、道と地元が一体となって、復旧・復興対策に取り組むことができるよう一層の連携を図っていく。

2ー2.今後の対応

岩本議員 胆振3町をはじめ、札幌市や北広島市などで被災した方々は、これまでの生活を一日も早く取り戻すことを望んでおり、道は地元自治体、国の関係機関などとも連携を密にし、各種の事業に速やかに取り組む必要があると考える。今後どう取り組んでいくのか。

高橋知事 年度内をめどに策定する復旧・復興方針に基づき、計画的な取り組みを推進することとしており、現地連絡調整会議などを通じて、被災地域の実情やニーズを的確に把握し、一日も早い復興と、その先の地域創生を目指して全庁一丸となって取り組みを進めていく。

3.本道の強靱化

岩本議員 温暖化の影響で近年、本道でも豪雨災害が多発し、千島海溝地震の発生も切迫していると言われている。国は本年度から3カ年で7兆円規模の防災・減災、国土強靱化のための緊急対策を進めることとしており、道は北海道強靱化計画に掲げる施策を着実に推進し、災害に強い北海道づくりに向けて積極的に取り組むべきと考えるが、どのように対応していくのか。

高橋知事 インフラ長寿命化計画を着実に推進し、トータルコストの縮減・平準化を図るとともに、北海道強靱化計画の見直しを行い、社会資本整備を着実に進めていく。

4.観光振興

岩本議員 ブラックアウトなどによる風評被害の影響で落ち込んだ観光需要は、韓国や台湾などからの入り込みに回復の動きがみられる。大きな影響を被った観光産業の復興について、どのように施策展開を図っていくのか。

高橋知事 観光客数は震災以前の水準まで回復しているが、ふっこう割終了に伴う落ち込みも懸念される。観光業界などと連携し、需要喚起に向けた旅行商品の販売やPRなどのキャンペーンに取り組み、本道観光の持続的な発展につなげていく。

5.エネルギー政策のあり方

岩本議員 有識者や関係団体で構成する新エネ施策懇話会が開催されたが、大規模停電が二度と発生しないよう電力の安定供給に主眼を置いた検討が求められる。日本一高いといわれる本道の電力料金水準を踏まえ、どのような点に重点を置いて本道にふさわしいエネルギーのあり方の検討を進めていくのか。

高橋知事 国に対し、北本連系線など、電力システムの整備を求めるとともに、安定性や事業性を考慮した「多様な自立モデル実証・実践の地」とするとの考え方を加えた地産地消の取り組みを進めていく。

(2)外国人材の受け入れについて

岩本議員 国は4月からの新たな在留資格の創設に向け、外国人材の受け入れ促進や外国人との共生社会実現に向けた環境整備を推進している。地方負担の大きさを懸念する声が少なくないが、外国人との円滑なコミュニケーションの実現に向け、どう対応していくのか。

高橋知事 市町村が行う日本語教育や各種サービスの多言語化、共同行事の開催を支援するとともに、地域国際化協会の体制強化、多言語による生活相談体制の充実などの外国人の受け入れ環境の整備に努め、多文化共生社会の実現に取り組んでいく。

(3)民族共生象徴空間について

岩本議員 国のアイヌ政策推進会議で、アイヌが生住民族であるとの基本的な認識が示され、市町村向け交付金の創設や民族共生象徴空間ウポポイの円滑な管理を盛り込んだ法案審議が進められている。象徴空間の開設機運を一層盛り上げるために、国やアイヌ民族文化財団と一体となって、PRや開設準備を加速する必要があるが、どう取り組むのか。

高橋知事 教育旅行の誘致、新千歳空港や雪まつり会場でのイベント開催などにより、国内外の観光客にウポポイの開設をアピールするほか、多くの方々に満足していただけるよう、飲食・物販施設や交通アクセスの充実を図るなど、オール北海道で積極的な取り組みを進めていく。

(4)統合型リゾート施設について

岩本議員 IRは海外客に年間を通じて楽しんでいただける複合施設で、本道観光のさらなる成長に大きく貢献する可能性がある。知事は昨年の第4回定例会で「時機を失することなく適切に判断する」との答弁をしたが、このまま任期末を迎えれば時機を失することになりかねない。IRに関して、任期内に何らかの判断を行う考えがあるのか伺う。

高橋知事 道の考え方を説明会などを通じて道民に丁寧に説明しているところであり、懸念される諸課題への万全の対策を講じることを前提に、IR誘致に向けた取り組みを進めることが重要と考えている。

(5)外国人への医療提供体制について

岩本議員 平成29年度に本道を訪れた外国人は約280万人に達しているが、突然の発熱、不慮の事故によるけがなどで、病院で診療を受けるケースが増加している。国は外国人患者の受け入れに関する指針の作成や拠点整備に向けた検討を、省庁横断的に進めているが、外国人への医療提供体制の整備に向けて、どう取り組んでいくのか。

高橋知事 年度内をめどに医療機関が外国人患者を円滑に受け入れるための指針を策定するほか、2次医療圏単位で拠点となる医療機関を選定するなど、グローバル化に対応した環境づくりに努めていく。

(6)児童相談体制の充実について

岩本議員 千葉県野田市で小学4年生の女児が父親から虐待を受けて死亡する事件が起き、関係機関の対応や連携のあり方が問われている。道は虐待対応の一層の迅速化を図るため、室蘭児童相談所の分室を新たに苫小牧市内に設置するとの考えを表明したが、開設時期などについての地元との協議にどう取り組むのか。

高橋知事 所有する旧道立苫小牧病院の付属施設に複合施設を整備し、2021年度にこの施設に分室を開設する。これに先立ち、新年度に室蘭児相の職員4名を苫小牧市内の道の機関に常駐させることとし、児相の機動力の強化に取り組んでいく。

(7)ギャンブル等依存症対策について

岩本議員 昨年10月に施行されたギャンブル等依存症対策基本法では、都道府県に対し、依存症対策推進計画を策定し、対策に取り組むよう努力義務を課している。すでにギャンブル依存症で悩んでいる方や家族がいることを考えれば、カジノ誘致の判断に関わらず、対策を早急に進める必要があると考える。どう取り組んでいくのか。

高橋知事 依存症で悩む方々を一人でも少なくすることが重要と考えている。有識者などによる検討会議を設置し、発症、進行などの各段階に応じた対策を進めるなど、国や市町村、関係機関と連携を図りながら、体系的なギャンブル等依存症対策に取り組んでいく。

(8)聴覚障がい者情報提供施設について

岩本議員 「障がい者の意思疎通の総合的な支援に関する条例」が昨年4月に施行され、多用な意思疎通手段の確保や環境整備などの取り組みが進められている。他の都府県で整備が進んでいる聴覚障がい者情報提供施設の早期開設に、どのように取り組んでいくのか。

高橋知事 この施設は、手話通訳などにより聴覚に障がいのある方々も、障がいがない方と同様に情報が得られるように取り組むとともに、災害時における情報提供の面でも重要な役割を担うものと考えている。広域・分散型の北海道にふさわしい施設としての事業内容について、ろうあ連盟と人員体制や環境整備などの具体化に向けた協議を進め、早期の開設に向け取り組んでいく。

(9)主要農作物の種子生産について

岩本議員 主要農作物の種子生産についての条例案が提案されている。条例を作るだけで本道農業の持続的発展につながるものではなく、この条例を基に優良な種子を生産し、安全・安心で良質な食料を国民に安定的に供給するという使命をしっかり果たしていくことが求められる。どう取り組んでいくのか。

高橋知事 条例案では、主要農作物の稲や麦、大豆に加え、輪作体系を維持する上で重要な小豆、エンドウ、インゲン、ソバを対象作物とし、道の役割と責務、JAなどの民間事業者が種子生産に取り組むための仕組み、知的財産の保護などに関する規定を設けた。安全で優良な種子の安定的な生産・供給について、農業者、関係団体とこれまで以上に連携し、本道農業の生産力と競争力の向上に取り組んでいく。

輸入増を踏まえた食の安全確保が必要

(10)食の安全・安心について

岩本議員 道は「食の安全・安心条例」を制定し、食に関する正しい情報提供や監視体制の強化、環境に配慮した生産、農薬や医薬品の適正使用、食育と地産地消の推進などを掲げた基本計画を進めてきた。農畜産物の輸入増加を踏まえ、実効性のある取り組みを進めるために、どのような点に重点を置いて次期計画を策定する考えか伺う。

高橋知事 持続可能な開発目標であるSDGsの達成に資するGAPの導入や環境保全型農業の推進、地域資源を活用した道産食品の消費拡大などを盛り込むこととしており、「世界から信頼される食の北海道ブランド」の実現に向けて積極的に取り組んでいく。

(11)秋サケ資源対策について

岩本議員 道が発表した漁業生産状況の速報では、秋サケの漁獲量は前年を上回ったが、小ぶりな魚体が多く、多くの漁業関係者が資源の早期回復を求めている。速やかに資源減少の原因究明と対策を講じていく必要があると考えるが、どう取り組んでいくのか。

高橋知事 近年の海洋環境の変化や各種の調査結果などを踏まえ、新たに研究機関や増殖団体で構成する「秋サケ資源対策協議会」を新年度、早期に立ち上げ、資源の減少要因の解明や放流時期の見直しを検討する。

(12)北海道立北の森づくり専門学院について

岩本議員 森林づくりの担い手を育成する専門学院を設置するため、道は今定例会に条例案と予算案を提案している。国は森林整備に必要な財源を安定的に確保するため、森林環境税と森林環境譲与税を導入し、新年度から市町村と都道府県に対して譲与税が措置されるが、この新たな財源をどのように有効活用し、2020年4月の開校に向けてどう取り組みを進めるのか。

高橋知事 譲与税を市町村の体制強化、担い手育成・確保などに活用し、本学院の整備や運営体制の構築にも充てる。開校に向けては教育計画の作成、校舎等の整備、産学官と連携したオール北海道の体制づくりを進めるとともに、道内や首都圏でPRキャラバンを行い、入学者の確保に努める。

2、教育問題について

(1)学校における働き方改革について

岩本議員 中教審答申において、教職員の勤務時間管理の徹底、適切な勤務時間の設定、1年単位の変形労働時間制の導入、業務改善・効率化への支援などの取り組み方針が示された。道教委は出退勤管理システムの試行を行っているが、その結果などを踏まえ、どのように勤務時間管理を進めていくのか。

佐藤教育長 教員の勤務時間を把握するため、昨年、道立学校においてパソコンとタイムカードの2種類の対照実験を行った。早期にすべての道立学校におけるシステム構築に向け、新年度はタイムカードを基本として、パソコンも併用し、より客観的で正確なデータを把握できるシステムの試行、対象校の拡大についての検討を進めていく。

(2)公立夜間中学について

岩本議員 道教委は夜間中学の設置に向けた検討を進めており、札幌市内への設置を前提に協議を進めることが確認された。義務教育未修了者、外国籍や不登校の人など、多様な生徒に対し就学機会を提供する重要な役割を担っており、札幌にとどまらず、他の地域でも整備が望まれる。北海道全体にどう展開していくのか。

佐藤教育長 すでに自主夜間中学がある函館、旭川、釧路の教育委員会などとの連携を深め、外国籍の方々への対応も含めてニーズや課題を丁寧に把握し、地域の実情に応じた設置のあり方について検討していく。

3、公安問題について

(1)道民の安全・安心の確保について

岩本議員 本道における平成30年の刑法犯認知件数は前年比9・6%減だったが、入国管理法違反容疑で建設現場で働いていた外国人が逮捕されたり、道内をレンタカーで観光中の外国人が起こした人身事故件数が5年前の3倍以上にあたる23件に増えるなど、外国人に関連する犯罪や事故が今後も増加することが懸念される。住宅宿泊事業法の施行や入国管理法の改正に伴い、治安悪化に不安を感じている道民も少なくない。本年はラグビーワールドカップやG20観光大臣会合などを控え、道民や来道者が安心して過ごせる地域社会をどう実現していくのか、見解を伺う。

山岸道警本部長 刑法犯の認知件数、交通事故による死者数は戦後最少を更新し、道内の治安は着実に向上している。外国人への対応の重要性が増していることから、バックカントリースキーヤーに対する外国語での注意喚起、不法滞在・就労の検挙も推進している。児童虐待事案については関係機関と緊密に連携し、児童の安全確保を最優先とした措置を講じていく。ラグビーワールドカップやG20については、警戒警備やソフトターゲット対策、宿泊事業者に対する管理者対策など、テロの未然防止に万全を期す。子供、女性、高齢者の犯罪被害防止、サイバー空間の安全確保など、10項目を本年の重点目標とし、職員一丸となって治安維持に取り組んでいく。

4、4期16年の高橋道政について

(1)財政運営について

岩本議員 高橋道政は平成15年、赤字再建団体への転落が懸念される極めて厳しい条件の下でスタートを切った。本道の強みである食と観光の分野で積極的な施策を進める一方で、思い切った行財政改革に取り組み、危機的な状況を脱することができたことは評価できる。道民が将来に希望を持って生き生きと暮らしていくことのできる北海道を実現するため、引き続き、しっかりとした財政構造の実現を目指さなければならない。4期16年の在任期間を振り返り、これまでの財政運営をどのように評価し、次の知事にどのような財政運営を期待するのか。

高橋知事 道財政の立て直しを最重要課題の一つと位置づけ、行財政改革を推し進めた結果、収支不足額はピーク時の5分の1程度に縮小し、着実に改善が図られてきていると認識している。道議会や道民の協力がなければ成し得なかったと考えている。一方で、他都府県と比較して依然、脆弱な財政構造にあることから、次の知事にも、財務体質の改善などの取り組みを着実に進めていただくことを期待している。

(2)JR路線見直しについて

岩本議員 知事は任期中に最も印象に残っていることを問われ、北海道新幹線の着工決定を挙げている。着工決定は、道議会をはじめ道民が一体となって取り組んだ快挙と言えるが、JR北海道は地方路線などの収支が悪化し、極めて厳しい経営状況にある。来年度からJR北への支援に向けた、国の新たな法整備についての議論が本格化するが、本道にとって最大の懸案であるJR路線見直し問題に、今後どのように関わっていく考えなのか伺う。

高橋知事 2年後の法整備に向けて議論を深めるとともに、JR北海道の厳しい経営状況や本道の特殊性などを広く全国に理解していただき、環境を整えていくことが必要と考えている。札幌開業後の2031年度のJRの経営自立と、北海道の発展を支える鉄道網の構築に向け、全力で取り組んでいく。

指摘

  1. 胆振東部地震災害からの復旧・復興について、被災された方々がこれまでの日常生活を一日も早く取り戻すことができるよう、復旧復興方針に沿って、住まいや暮らしの再建、ライフラインやインフラの復旧などの各種事業をさらに加速させる必要がある。その際には、特に被災自治体の意向や考え方に十分耳を傾け、緊密に連携を取りながら取り組むべきであり、わが党としても必要な役割を積極的に果たしていく考えであることを申し上げておく。
  2. 公立夜間中学について、国は、市町村立、都道府県立の設置を促すとともに、ボランティアなどにより自主的に行われている夜間中学についても、地域の実情に応じて適切な措置を検討するよう各地方公共団体に求めている。協議会の議論を踏まえて設置のあり方を検討していくとのことだが、義務教育未修了者に加え、本国において義務教育を修了していない外国籍の方、不登校などの事情から十分な教育を受けられないまま、学校の配慮などにより卒業した方の学び直しの場として重要な役割を担っている。市町村などと緊密に連携し、主体的に取り組むよう指摘する。
  3. JR北海道の路線見直しについて、現在、JR貨物やトラックでは道央圏と首都圏との間の輸送に17〜19時間かかるといわれているが、夜間などに首都圏との間を約5時間で結ぶ貨物専用新幹線が実現できれば、一次産品の付加価値を高めることができ、トラックドライバー不足や二酸化炭素排出抑制にも大きな効果が期待できる。道は、貨物輸送にかかわる皆さんの声にも十分に耳を傾け、全国的な議論を喚起し、必要な対策の実現を国に強く働き掛けていくべきである。わが会派も地域の声を代表する立場で、道とともに取り組みの先頭に立つ覚悟であることを申し上げておく。