●平成29年第2回定例道議会 自民党・道民会議 代表格質問答弁要旨
東 国幹 議員(あづま くによし) (旭川市選出)
観光振興を目的とする財源確保を推進
昭和43年2月17日、上川郡風連町(現・名寄市)生まれ。深川西高校、東海大学法学部卒業。衆議院議員秘書、旭川市議会議員を経て、平成11年に道議に初当選。4期目。道議会自民党・道民会議議員会幹事長、自民党道連青年局長、同選挙対策委員長などを歴任。現在、道議会自民党・道民会議議員会会長、同経済常任委員、同人口減少問題・地方分権改革等調査特別委員など
第2回定例道議会は6月20日に開会し、第31代議長に大谷亨道議を選出したほか、本会議では欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)大枠合意を踏まえた万全の対策や、北朝鮮ミサイル発射への実効ある措置を政府に求める意見案のほか、総額約70億円の一般会計補正予算案を可決し、7月7日に閉会した。自民党は6月23日に代表格質問を行い、道理事者に人口減少問題、観光振興、農業・漁業振興などについての決意をただした。
東議員 東京オリンピック・パラリンピックの開催費用は、組織委員会、東京都、国の三者が負担することとされていたが、東京都知事が新たに選出された以降、混乱が続き、競技開催地の負担は判然としていない。開催地の経費を早急に明らかにするとともに、立候補ファイルの原則に基づくように求めるべきと考えるが、見解を伺う。
高橋知事 5月の関係自治体等連絡協議会で、立候補ファイルの原則が改めて確認された。札幌市などと連携しながら、費用負担が原則に基づいて行われるよう国などに求めていく。
東議員 5月末に行われたEUとのEPA交渉では、乳製品の輸入特別枠の設定や豚肉の関税を、TPPの水準まで下げる方向で調整が進められている。交渉結果は本道の農林水産業に大きな影響をもたらすと考えているが、どう対応していくのか。
高橋知事 国に対し、重要品目に対する国境措置の確保や丁寧な情報提供を強く要請し、農林水産大臣からしっかり対応する旨の発言があった。交渉の動きを注視しつつ、力強い農林水産業づくりを推進していく。
東議員 人口減少を背景に、道と市町村がそれぞれの創生総合戦略に基づき取り組みを進めているが、これまで通りの行政サービスを提供し続けられるのかが課題である。道、市町村のトップが膝を交えて地域づくりの方向性を見出だし、具体化していくことが求められるが、どう取り組んでいくのか。
高橋知事 地域の実情を把握し、必要な助言を行うことはもとより、私や副知事が直接、市町村に出向き、地域の方々と対話を重ね、持続可能な地域づくりを積極的に支援する。
東議員 教育大綱の改定に向けた検討が進められているが、子供の貧困やいじめ、深刻な人手不足、グローバル化する経済社会への対応など、教育と保健福祉、経済などの分野が連携して取り組まなければならない課題が少なくない。どのような点を重視し、策定しようとしているのか。
高橋知事 北海道の新たな価値を創出し、未来を切り拓く人材を、総力を挙げて育成することが何よりも本道の教育にとって重要と考えている。その実現に向け、施策が効果的に展開されるよう、教育行政の基本理念を示していく。
東議員 本道は全国に比べ、女性や高齢者の就業率が低い。こうした方々が活躍する場を広げることは、人手不足の解消にもつながり、経済活性化に結び付く。どのように働き方改革を進めようとしているのか。
高橋知事 全ての産業分野で働き方改革が進むよう、取り組みの方向性を示す推進方策を今秋をめどに策定する。庁内関係部局が一体となって、地域社会の持続的発展、経済活性化を目指して取り組んでいく。
東議員 北朝鮮は国際社会の強い反対の声を無視する形で、弾道ミサイル発射を繰り返している。万が一、道内に落下した場合には、道民の生命や財産、経済活動に甚大な影響が懸念される。どう対応する考えなのか。
高橋知事 ミサイル落下時にとるべき行動の周知を市町村や報道機関に依頼するなど、積極的な広報に努めているほか、防災訓練に合わせて住民避難、情報収集・伝達などの訓練を実施し、危機対応能力の強化を図る。
東議員 道の行財政運営は、高齢化の進展による福祉関係経費の増加、道債の金利負担の増加、災害発生など、財政需要を押し上げる要素にも留意しなければならない。財務情報の「見える化」の流れも踏まえ、運営方針を見直すべきではないか。
高橋知事 中長期的な視点のもと、持続可能な財政基盤を確立できるよう、平成30年度当初予算編成と合わせて運営方針を見直していく。
東議員 地方自治体の債権管理条例の制定によって、管理事務の統一化や効率化、収入未済額の縮減に効果が期待できるものと考える。条例の制定に向けて、どのように取り組む考えか。
高橋知事 他の都府県において、条例により一定の効果が現れている。年度内をめどに制定に取り組んでいく。
東議員 多くの企業が、自動車運転技術や人工知能の開発などにしのぎを削っている。見直しから5年を経過した産業振興条例が、時代のニーズや企業の応えきれていないのではないかと考えるが、競争力強化に向け、どう対応していくのか。
高橋知事 北海道商工業振興審議会の意見を踏まえつつ、本年度中に支援制度を見直し、新分野への挑戦や研究開発への支援、企業立地の促進などに努める。
東議員 外国人観光客の入り込みが多い倶知安町とニセコ町が、法定外目的税の導入を検討しているとの報道があった。道は観光振興に向けた財源確保の検討を進めているが、市町村の取り組みに悪影響を与えずに、どのように相乗効果を発揮する方策を講じるのか。
高橋知事 新たな財源の確保について全道的な見地から検討を進め、7月にも諮問する観光審議会の意見を踏まえ、広く協議を進めていく。
東議員 民泊に関する住宅宿泊事業法が来年早々にも施行される。都道府県は届け出受理、業務の監督などの事務を行うが、事業実施期間に関する条例の取り扱い、保健所設置市との連携などにどのように取り組むのか。
高橋知事 地域の実情を把握しながら条例の検討を進めるとともに、指導監督にあたっては旅館業法との一体的運営を図る観点から、庁内体制を整備するなど、実効性ある仕組みになるよう取り組む。
東議員 知事の諮問を受けた運輸交通審議会では今後、公共交通ネットワークに関し、小委員会の考え方を踏まえ、現在のビジョンに代わる新たな指針の検討が進められると考える。JR事業見直しや空港民間委託の動きと、どのように整合性を図りながら指針の策定に臨むのか。
高橋知事 国や市町村、交通事業者と一層連携しながら、地域における検討・協議の状況を踏まえつつ、道民や観光客が円滑に移動できる総合的な交通ネットワークの形成に全力で取り組んでいく。
東議員 JR北海道からの情報に加え、沿線自治体の人口や財政状況などの道が持つデータに裏打ちされた客観的な議論を深めていくことが、事態を進展させ、国からの支援を引き出すことを可能にする。どのように取り組みを進めていくのか。
高橋知事 地域住民の移動実態や来道者の動向など、さまざまな情報の提供を行いながら、現状分析や議論がさらに深められるよう、自治体、国、JRへ働きかけていく。
東議員 道内7空港の民間委託について、管理者である国土交通省、道、旭川市、帯広市によるトップ会談で、7空港一体の枠組み維持などを内容とする5原則についての合意が図られた。これを受けて、どのように取り組みを進めていくのか。
高橋知事 5原則には、北海道発の提案の基本的な考え方が反映されたと認識している。これをもとに制度設計に取り組み、航空ネットワークの充実、空港機能の強化を図る。
東議員 グローバル化に関しては、国内産業の空洞化や農産物の競争激化、相互依存が国際的に深まることによる経済不安定化などを懸念する声も少なくない。どのような考え方で指針の策定に取り組む考えなのか。
高橋知事 将来にわたり地域を発展させるには、食や観光の分野で海外需要を獲得することが重要。さまざまな影響を考慮し、今年度中に国際化に向けたグローバル戦略を策定する。
東議員 道内には、建設から半世紀を超える建物やインフラが少なくない。補修や耐震化などの中長期的な需要量を示し、建築、土木、施設整備に関する道の推進計画を明らかにすることが、建設産業の振興につながると考えるが、見解を伺う。
渡辺建設部長 インフラ長寿命化計画に基づき、個別計画を策定済みの公共土木施設については、補修・更新に必要な費用の総額を示している。その他の施設についても、点検状況を踏まえながら需要見通しを示すとともに、予算確保にも努めていく。
東議員 住宅供給公社の平成28年度決算では、道からの多額の短期貸付金は長期貸付金への転換が見られるが、債務超過額が前年度から7億円増の約97億円となり、経営が改善に向かっているとは言えない。どのように経営改善を図るのか。
高橋知事 破綻債権、更生債権の貸倒引当金への全額計上、事業用地の評価損などにより債務超過額が拡大した。業務改善策を着実に実行し、今年度の早い時期に返済計画の見直しが行われるよう指導する。
東議員 ホテルや商業施設などの大規模建造物は、耐震改修促進法により耐震診断が義務付けられている。法改正から3年以上が経過し、診断結果が未公表の都道府県は本道を含め5団体で、公表を検討する時期にきていると考えるが、見解を伺う。
高橋知事 札幌市など10市と連携して公表に向けた準備を進めており、十分協議の上、本年秋をめどに公表する。
東議員 白老町に整備中の民族共生象徴空間は、アイヌ文化を伝える共生社会のシンボルとなる。2020年4月の開業までに、民間のノウハウを生かした魅力ある展示や企画の提示、効果的な情報提供を進めなければならず、国、民間と共に体制を整備すべきではないか。
高橋知事 ハワイのポリネシア・カルチャー・センターのような魅力ある事業展開が必要であり、民間の協力をいただきながら準備体制を夏までに整備する。
東議員 道の総合保健医療協議会で、次期医療計画策定に向けた検討が進められている。広域分散型の本道にはさまざまな課題があり、これまでの計画を検証した上で、今後6年間の担うべき医療の姿を示していく必要があると考えるが、どう取り組むのか。
高橋知事 がんや脳卒中の5疾病、救急医療や周産期医療などの5事業、在宅医療の充実、医療従事者の確保などについて検討し、医療と介護が連携した地域包括ケアシステムの構築に向け、幅広く協議を進めていく。
東議員 道の調査では、年収300万円以下の世帯における子供の授業の理解度や進学意識、経済的理由で食料が買えない経験など、世帯の状況が生活や教育に大きく影響している実態が明らかになった。貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、どう対策を進める考えなのか。
高橋知事 乳幼児健診などの機会を通じて家庭の経済状況を把握、支援するとともに、子供の居場所づくりのマニュアルを年内に策定し、子供の夢や希望をかなえられる地域社会の実現に取り組む。
柴田教育長 低所得者世帯への就学支援給付金の支給、学習機会の提供、就学援助のなどに努めてきたが、調査結果を踏まえ、市町村やPTAの協力を得ながら支援情報の効果的な周知を図るなどして、鋭意取り組んでいく。
東議員 4月から地方公営企業法を全部適用した新たな経営形態で、病院事業の改革がスタートした。トップに就いた病院事業管理者が定めた経営方針では、地域医療を守り、安定的な医療を提供し続けることが掲げられているが、どのように具体化していくのか。
鈴木病院事業管理者 患者や家族に寄り添った質の高いサービスの提供を経営方針とした。地域の安心のよりどころとなる病院づくりに、職員一丸となって取り組んでいく。
東議員 国は「農業競争力強化プログラム」を決定し、農業改革を進めるための8法案の成立をみた。主要農作物種子法の廃止に伴い、道が担ってきた稲、麦などの優良品種の認定試験、原種の生産、種子の審査などの今後の取り組みを、丁寧に説明する必要がある。どう取り組むのか。
高橋知事 財源確保を含めた役割や機能分担について、7月にも方向性を明らかにし、生産者が安心して営農に取り組めるよう力を尽くしていく。
東議員 ホタテ、秋サケ、コンブなど、主要魚種の生産量が大きく減少し、水産業を取り巻く環境は厳しさを増している。次期計画では、資源管理の強化と栽培漁業の推進への一層の取り組みが求められるが、何を重点に取り組むのか。
高橋知事 漁業生産の早期回復と安定化を図るため、資源回復、増養殖技術の開発、担い手の育成・確保、漁船の更新による生産体制づくりなどを重点的に取り組んでいく。
東議員 林業の成長産業化に向けて、総合的な知識や技能を有する人材の育成・確保が喫緊の課題である。人材育成機関の設立に向けた検討を、どのように進めるのか。
高橋知事 有識者による検討会を設置し、林業大学校などの人材育成機関の設立に関する基本的な考え方を、本年中に取りまとめる。
東議員 本道の教育においては、学力や体力の向上、グローバル化への対応のほか、子供の貧困や地域格差などの新たな課題への対応も必要となる。新たな教育推進計画の策定を、どう進める考えなのか。
柴田教育長 豊かな人間性や健やかな体の育成、学びを支える家庭や地域の結びつきを深める環境づくりを柱に、人口減少下で喫緊に取り組むべき重点施策も盛り込みながら計画を策定していく。
東議員 少子化の進展に伴い、高校教育における適正規模の学級の維持が難しくなっており、新たな指針の作成には丁寧な議論が必要である。特別支援教育の基本方針に関しても、障がいの重度・重複化、多様化などへの対応が求められる。指針・方針の作成に向け、どのように取り組みを進めるのか。
柴田教育長 高校教育の指針については、「活力と魅力ある高校づくり」「経済社会の発展に寄与する人材を育む高校づくり」などを柱とし、地域の教育機能の維持の観点から、地域キャンパス校の再編基準の緩和も盛り込む。特別支援教育の基本方針については、「インクルーシブ教育システムの構築」「自立と社会参加」などを柱に策定する。これらは北海道教育推進計画との整合性を図りながら、年度内をめどに策定することとしている。
自民党・道民会議 一般質問項目