●平成27年第4回定例道議会 自民党・道民会議 代表格質問答弁要旨

中野 秀敏 議員(名寄市選出)

tanaka
後継者不足、基盤整備などの課題を指摘

TPP契機に「強い農業」への予算を要求

昭和32年旧風連町生まれ。拓殖大学北海道短期大学卒業後、就農。風連町議会議長、名寄市議会議員などを経て、平成23年に道議会議員初当選。2期目。現在、道議会保健福祉常任委員会理事、同少子・高齢社会対策特別委員会副委員長、道議会自民党・道民会議政策審議副委員長、自民党道連組織委員会副委員長など。

 第3回定例道議会は11月26日から12月10日まで開かれ、自民党・道民会議からは中野秀敏議員が代表質問に立った。道が策定作業を進める新しい総合計画をはじめ、10月に大筋合意したTPPへの対応、全国下位に低迷する子どもの学力問題、道警職員の不祥事再発防止など、道政上の重要課題について高橋はるみ知事らの見解を鋭くただした。

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「心豊かに暮らせる北海道」の実現を

一、知事の政治姿勢について

(1)新しい総合計画

中野議員 道は、今年度中に策定する新しい総合計画の原案を明らかにした。平成37年までの10年間、北海道が目指すべき姿や道政の基本的な方向性を示すもので、重要な意味を持つ。さまざまな課題を抱える本道を持続的発展に導いていくため、実効性をどのように確保し、実現しようと考えているのか。

高橋知事 あらゆる政策資源を効果的に投入しながら、産学官が連携して創生総合戦略や強靭化計画などをスピード感をもって展開する必要があると考える。北海道創生加速化事業枠を設定するなどして、推進状況の一体的な管理ができる仕組みを確立し、全庁一丸となって取り組む体制を整備する。

(2)北海道創生総合戦略の推進
1 北海道創生総合協議会

中野議員 10月に決定された北海道創生総合戦略では「幅広い世代が集い、つながり、心豊かに暮らせる包容力のある北海道」の実現に向け、オール北海道で取り組むことを基本方針に掲げている。事業内容や予算は議会のチェックを受けるべきだと考えるが、戦略の推進管理を担う創生協議会は議会とどのような関係を持ち、どのような責任を負うのか。

高橋知事 行政と民間が適切な役割分担のもと、総力を挙げて実現に向けて取り組んでいくべきである。戦略の成果については、協議会事務局である道が道議会に報告し、適宜、議論していただく。

2 地域における戦略の推進

中野議員 道は市町村の総合戦略策定を支援するため、振興局に担当部長を配置し、策定は今年度内に終わると聞いている。振興局は地域づくりの拠点であり、地域とともに考え、行動するための体制整備が必要である。戦略の推進にどう取り組もうとしているのか。

高橋知事 地域ニーズに対応できるように、振興局長の権限拡大など、効果的で機動的な体制整備を検討していく。

(3)TPP対策

中野議員 TPP交渉は10月に大筋合意に至り、政府は関連政策大綱を決定した。大綱では、新輸出大国を目指すとともに、グローバル・ハブとしての持続的な成長を実現するための政策を展開することとしている。本道の課題を踏まえ、強い農林水産業への転換に向けてどう取り組んでいくのか。

高橋知事 新技術の導入や生産基盤の整備、輸出や6次産業化の推進など、担い手が将来に希望をもって経営に取り組み、農林水産業が持続的に発展するよう取り組んでいく。

(4)経済対策

中野議員 道は地域経済の活性化に取り組んできたが、対策の効果が明確ではない。地域経済カルテに基づいた対策を、総合戦略や計画などにどう反映させたのか。また、地域経済の課題に今後どう取り組んでいくべきと考えているのか。

高橋知事 カルテに掲げた地域資源を踏まえて基本方針を策定し、観光や食の輸出に関する計画に盛り込んでいる。引き続き、課題に即応した施策を展開していく。

(5)行財政運営の方向性
1 行政改革の推進

中野議員 行政改革は知事が示す明確な方針の下、職員の意見を活かす仕組みを創る必要がある。どう進めていく考えか。

高橋知事 職員の意見が業務に反映されるよう改善提案制度を設けるとともに、改革意識の醸成を図っていく。

2 職員数適正化計画

中野議員 今後、道立病院が地方公営企業法を全部適用すれば、1万2600人程度を目指すとした、職員数適正化計画の目標は達成されることになる。その一方で、新規採用の抑制によって職員の年齢構成に偏りが出ており、限られた人員の中で計画的に組織運営を行うことが必要と考えるが、見解を伺う。

高橋知事 これまでの改革により達成した現行の組織規模を基本としながら、行政課題に柔軟に対応する執行体制の確立に努めていく。

3 財政基盤の確立

中野議員 財政運営について、交付税に頼らざるを得ない歳入状況と、それと裏表の関係にある産業構造、経済活動の脆弱性が是正されなければ、財政基盤の確立は成し得ない。どう取り組んでいくのか。

高橋知事 道財政は依然として厳しい状況にあり、平成33年度における収支均衡を目指すとともに、全国で最も高い実質公債費比率の改善、緊急時対応のための財政調整基金の積み立て、経済活性化による税収確保などにより健全化を図っていく。

4 来年度の予算編成

中野議員 今後の収支見通しでは、30億円程度の歳出削減が必要とされている。国の交付金などの特定財源や他の歳入確保に努めるとともに、来年度予算の編成にあたっては、実質的な削減をしなくても済むよう取り組むべきと考える。どのような姿勢で臨むのか。

総務部長 来年度予算編成においては、国の予算編成や地方財政対策の内容も踏まえながら、道税などの歳入の確保や収支不足の縮減に努めていく。

2、道政上の諸課題について

(1)食の輸出拡大戦略

中野議員 食の輸出拡大戦略案では、平成30年までに1000億円を目指すとしている。相手国のニーズや衛生基準、物流の仕組みを把握しなければならず、実現に向けて直ちに施策を進めていく必要があるのではないか。

高橋知事 重点品目を中心に鮮度保持技術の活用、輸出に必要なHACCP認定の取得を促進するとともに、品目横断的なプロジェクトを展開し、オール北海道で輸出拡大を図っていく。

(2)観光振興
1 海外の市場規模に応じた取り組み

中野議員 外国人観光客300万人を達成するためには、国や地域別に市場の規模や特性を分析し、それに対応した取り組みを進める必要があると考えるが、見解を伺う。

高橋知事 ビッグデータを活用して外国人旅行者の潜在的ニーズを把握するとともに、市場について分析し、より効果的なプロモーションに努めていく。

2 外国人来訪者の受け入れ体制

中野議員 外国人来訪者数は急激に伸びており、目標の300万人は達成可能な数値と思われるが、受け入れ体制の整備が追い付かないことが危惧される。どう進めていくのか。

高橋知事 外国人から選ばれる観光地づくりを進めるとともに、CIQ体制やWi-Fiの整備、多言語に対応できる人材育成などに取り組むことが重要。関係団体で構成する連絡会などの検討を踏まえ、具体的な手立てを明らかにしていく。

3 観光入り込み客数の現状

中野議員 外国人来訪者が急激に増える一方で、道内外の旅行者はわずかな伸びにとどまっている。どう入り込み客を増やしていくのか。

高橋知事 観光振興機構、市町村などと一体となって、地域資源を生かした滞在交流型の観光地づくり、受け入れ体制の充実、きめ細やかなプロモーションにより誘客の拡大に努めていく。

(3)交通政策
1 地域公共交通検討会議について

中野議員 新幹線開業など、本道の交通環境が変化する中、総合的な交通ネットワークについて検討する地域公共交通検討会議が11月に開催された。今後の議論をどう進めていくのか。

高橋知事 将来を見据えた公共交通網の姿について地域の意見を伺い、道外の事例を調査しながら議論を進めていく。

2 JR日高線への対応

中野議員 高波被害により運休が続く日高線を早期復旧するためには、地元を巻き込んだ利用促進策の検討が運行再開に向けたカギになると考えている。どう対応していくのか。

高橋知事 JR北海道からは、地域と一体となって鉄路を維持する仕組みを相談する協議会の設置を求める提案があった。復旧に必要な補助制度に関する検討を加速するなど、一日も早い運行再開に努めていきたい。

3 減便等への対応

中野議員 JR北海道は留萌〜増毛間の廃止に続き、9月には気動車の老朽化に伴う列車減便方針を明らかにしたが、どう対応していくのか。

高橋知事 10月にJRに対し、安易な業務の見直しを行わないよう要請を行った。沿線自治体の意見を伺いながら、道民の視点に立って働きかけを行うなど、適切に対応していく。

(4)くい工事の不正行為
1 不正行為に対する認識

中野議員 旭化成建材が施工したくい工事のデータ流用が、次々と判明している。多くの道民が安全性に不安を抱いているが、どう受け止めているのか。

高橋知事 過去10年間、同社が道内で施工した425件のうち、58件で流用が判明し、大変遺憾である。利用者への丁寧な説明、安全性の確認を指示した。道民の不安を払拭するよう対策に取り組む。

2 安全性の確認

中野議員 データ流用が判明した道有施設の安全性の確認に、どう取り組んでいくのか。安全性の確認を早急に進めるため、体制を強化して全力で取り組むべきではないのか。

高橋知事 安全性の確認方法について、学識者などで構成する検証委員会を新たに設置し、専門的な見地から意見や助言をいただくこととしている。データ流用については、工事監督や検査方法の見直しを検討する必要があると考えている。

3 旭化成建材以外のくい工事

中野議員 くい打ち業界団体コンクリートパイル建設技術協会は11月27日時点における、会員企業の自主点検結果を国土交通省に報告し、全国6社で22件のデータ流用があったことが判明した。この結果をどう認識しているのか。

高橋知事 建物への信頼を損ねることになり、大変遺憾である。6社に本道における調査状況を照会するとともに、国の対策委員会の検討などを踏まえて適切に対応していく。

(5)津波対策について
1 被害想定の公表

中野議員 巨大津波被害に対応するためには、拙速な被害想定の公表や減災目標、対策の策定を避け、国の対策と整合をとった上で、万全なものとして道民に明らかにすべきではないか。

危機管理監 本年度末の公表をめどに、道独自の浸水予想図をもとに被害想定の検討を進めてきた。国の太平洋沿岸の地震防災戦略に連動し、公表を行うことが適切と考えている。

2 減災目標

中野議員 国の現行戦略では、巨大津波に対する減災目標は死者数を4割から5割減で、南海トラフ地域でも8割減としている。単に国の目標にならうということではなく、道民が安心して暮らせるように慎重に検討するべきではないか。

高橋知事 1人でも多くの道民の命を救うという考えのもと、国の支援策や市町村の避難計画を勘案しながら慎重に検討する。

(6)飲酒運転の根絶

中野議員 今定例会の初日に、全会派一致で「飲酒運転の根絶に関する条例」を可決した。飲酒運転根絶、交通安全対策の徹底にどう取り組むのか。

高橋知事 条例の可決を受け、決意を新たに、飲酒運転の根絶を呼びかけるメッセージを発表した。関係機関と連携し、安全で安心な北海道づくりに努めていく。

(7)地域枠医師の病院への配置

中野議員 道は医師の確保を目的に、地域の病院に勤務することを条件として修学資金を貸与する地域枠制度を札幌医科大、旭川医大で導入した。来年度の地域枠医師の配置調整を、どう進めようとしているのか。

保健福祉部長 来年度から勤務する7人については、地域貢献とキャリア形成の両立という考えに基づき、医療機関の現況調査と本人の意向把握、大学の講座責任者と意見交換を行っている。制度が安定的に運営されるよう努める。

(8)子どもの貧困対策について

中野議員 道は年内に「子どもの貧困対策推進計画」を策定し、取り組みを進めるとしているが、「どこに相談してよいのかわからない」という声も聞かれる。さまざまな支援策が子どもやその家族に確実に伝わり、活用される仕組みを整えるべきではないか。

高橋知事 策定中の計画に、相談支援体制の充実を位置づける。生活困窮者の自立に向けた取り組みを促進し、子どもたちが安心して過ごすことのできる具体的な仕組みづくりを進める。

(9)農業問題
1 農地等の基盤整備

中野議員 道は、農地整備にかかる農家の負担を軽減する農地パワーアップ事業を実施してきた。TPP大筋合意を踏まえ、国際競争に耐えうるよう本道農業の体質強化を図るため、事業のあり方を検討すべきだと考えるが、見解を伺う。

高橋知事 競争力の強化を図るためには、農作業の大幅な省力化を実現するほ場の大区画化などが求められる。基盤整備の進め方、農家負担のあり方を早急に検討していく。

2 草地の基盤整備

中野議員 TPPによる酪農、畜産業への影響が懸念されており、輸入飼料から良質な自給飼料へ転換し、経営体質の強化を図ることが喫緊の課題である。草地の生産性向上に取り組むべきと考えるが、見解を伺う。

高橋知事 雑草の侵入などで生産性が低下している草地は、計画的な更新、起伏の修正、排水の改良を着実に推進し、基盤強化に努めていく。

 

学力向上には学習習慣の改善が必要

 

(10)漁業問題
1 さけ・ます流し網漁業対策

中野議員 ロシアでさけ・ます流し網漁禁止法が成立したことを受け、道は国に対する支援要請を行った。道東の水産業をはじめ、関連産業への影響を考えると、対策の早期実施が求められるが、どう取り組むのか。

高橋知事 はえ縄などへの漁法転換については、国とロシア政府との間で協議が進められている。減船や休漁に対する補償、サンマ漁業への転換などの対策を進めるための予算を確保し、影響が最小限となるように取り組んでいく。

2 漁業近代化資金

中野議員 本道の漁船や設備は老朽化が進み、多くが更新時期を迎えている。漁業関係団体は、資本整備に欠かすことのできない漁業近代化資金の融資枠増額を要望しているが、どう対応していくのか。

山崎水産林務部長 漁船や施設の整備、災害による施設の復旧など、これまで以上に資金需要が高まっている。融資枠の確保に向けて取り組んでおり、漁業者が安定経営を行えるよう積極的に取り組んでいく。

3、教育問題について

(1)学力向上対策

中野議員 今年度の全国学力学習状況調査の結果が先日、文教委員会に報告された。今年で9回目で、改善が見受けられるものの依然として多くの課題が残されている。学習習慣で成績上位県との間に大きな差があるが、どのように家庭学習を習慣づけていくのか。

柴田教育長 学習習慣を定着させるためには幼児期から一貫した指導が大切であり、子どもの成長に合わせた保護者の関わり方を今年度の報告書に掲載した。これをもとにリーフレットを作成、配布し、市町村教委や学校に対し保護者や住民と連携した取り組みを進めるよう指導助言する。

(2)グローバル人財の育成

中野議員 平成13年、カンボジアにNayoro・Keiryoという名前の小学校が開校した。閉校した名寄恵陵高校の生徒が、内戦で校舎が破壊された現地の子どものために募金などで資金を集め、学校を建設した。北海道教育大綱にはグローバル人財の育成がうたわれているが、訪日教育旅行や自治体の姉妹提携交流を活用し、入り口づくりを進めるべきではないか。

柴田教育長 子どもたちが地域の伝統文化に親しむ機会を提供したり、海外交流に取り組むフォーラムを開催するとともに、海外からの教育旅行の受け入れを一層促進する。

4、公安問題について

(1)警察行政の体制

中野議員 交通違反の点数切符のねつ造、取り締まり対象の暴力団員に対する捜査情報の漏えい、拾得物の詐欺など、警察職員による不祥事が相次いでいる。現状をどう受け止め、道民の信頼回復と再発防止にどう取り組むのか、見解を伺う。

室城道警本部長 警察職員としてあるまじき行為が連続して発生し、極めて憂慮すべき事態と重く受け止めている。組織の長として深くおわび申し上げる。再発防止に向け、職務倫理教育の強化、身上把握や業務管理の徹底のほか、新たに警察本部に部門横断的なプロジェクトチームを設置し、業務見直しを検討していく。

再質問と指摘
○食の輸出拡大戦略について

中野議員 付加価値の高い商品をどう開発していくのか、販路拡大にどう取り組むかなどが明らかではなく、戦略というには内容が不十分である。どのように進捗を管理していくのか、見解を伺う。

高橋知事 半年ごとをめどに品目別の輸出実績を検証し、柔軟な施策の見直しをするとともに、戦略の推進を加速するプロジェクトに機動的に取り組む。

○観光振興について

中野議員 観光振興にあたっては成熟市場、成長市場などのマーケット特性を踏まえた数値目標を持ち、方向性の議論を重ねるべきであると考える。観光資再発防止に向け、職務倫理教育の強化、身上把握や業務管理の徹底のほか、新たに警察本部に部門横断的なプロジェクトチームを設置し、業務見直しを検討していく。源や受け入れ体制の整備をどう進めていくのか、再度伺う。

高橋知事 市場規模や特性についての分析をもとに来道者数の目標を設定し、年度ごとに達成状況を検証するなど、スピード感を持って対応していく。

自民党・道民会議 一般質問項目

○大越農子 議員(札幌市豊平区)
  1. 6次産業化の推進について
  2. 子どもの貧困対策と子ども食堂等の取り組みについて
  3. 高齢者住宅について
  4. 国民健康保険制度について
  5. 聴覚障がい者への支援について
  6. 性感染症の防止対策と性教育について
  7. 教職員定数について
○花崎勝 議員(札幌市厚別区)
  1. 北海道開拓の村について
  2. 特殊詐欺について
  3. 高度先進医療提供体制の充実について
  4. 小規模企業の振興について
  5. 北海道森林づくり条例について
  6. 小中連携・一貫教育について
○船橋賢二 議員(北見市)
  1. 道の業務改革について
  2. TPPの中長期的影響への対策に向けた仕組みづくりについて
  3. 北海道の物流のあり方について
  4. これからの強い農業政策について
○𠮷川隆雅 議員(札幌市北区)
  1. くい工事について
  2. MICE誘致の取り組みについて
  3. 北海道新幹線開業に伴う取り組みについて
  4. 食クラスターについて
  5. 改正地方公務員法への対応について
  6. 産後ケア事業について
  7. アレルギー疾患対策について
  8. 児童虐待防止の取り組みについて
○加藤貴弘 議員(札幌市西区)
  1. 鳥獣対策について
  2. 認知症高齢者の安全確保について
  3. 外国人観光客の交通安全対策について
  4. 社会資本の整備について
  5. 体力向上について
  6. テロの未然防止について
○八田盛茂 議員(小樽市)
  1. 中小企業への支援について
  2. 次期雇用創出基本計画について
  3. ASEAN戦略について
  4. 高校配置計画について
  5. 職員団体の活動について