●平成23年第2回臨時道議会 自民党・道民会議一般質問

自民党・道民会議 松浦 宗信 議員

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震災対策で約48億円を補正

  平成23年第2回臨時道議会が5月13日招集され、19日まで7日間の日程で開かれた。新議長に喜多龍一議員(自民党・道民会議、十勝管内選出)を選出したほか、東日本大震災による道内の漁業被害対策費として総額48億4,500万円の一般会計補正予算案などを審議した。自民党・道民会議からは松浦宗信議員(根室市)が質疑に立ち、水産被害対策、原子力発電所、観光対策について知事の見解をただした。

 補正予算案は国の第1次補正予算の成立に伴うもので、道の震災対策費の予算計上は3月末の23億1,900万円に続いて2回目になる。
 内訳は共同利用漁船復旧支援事業費補助金が44億6,700万円で、被災した漁船の復旧を図るため、漁協などが行う共同利用漁船の導入に対し支援する。漁船建造16隻、中古漁船購入11隻分を盛り込んだ。
 水産業共同利用施設災害復旧事業費補助金として、えりも漁協ほか14漁協の製氷施設、冷凍施設、水産物荷さばき施設など62カ所の災害復旧支援に1億5,000万円、根室漁協ほか13漁協のコンベアー、フォークリフト、計量機器など33件の整備に1億円を計上。マツカワやハタハタを育成している道栽培漁業えりもセンターには9,400万円を計上した。

【質疑要旨】

1、水産被害対策について

水産予算をどう受け止めるのか

(1)国の第1次補正予算について
松浦議員 5月2日に国の第1次補正予算が成立し、このうち水産予算は平成23年度当初予算を上回る2,153億円が計上されている。知事はどのように受け止めているのか。
高橋知事 今回の国の予算では、共同利用施設などにおいて、早期復旧のための事前着工が認められたほか、大型漁船や共同利用施設の機器類への支援事業が新たに創設されるなど、概ね必要な予算が措置された。
 しかし、本予算で噴火湾や厚岸湖で大きな被害があった養殖施設について、個人が所有していた施設を漁協の共同利用施設として復旧していくことや、アサリ漁場の再生に向けた砂の投入が対象になっていない。
 制度の弾力的な運用や、第2次補正に向けて必要な予算の確保を、引き続き国へ働きかける。

支援策創設で可能な対応は

(2)漁船の復旧対策について
松浦議員 本道関係の漁船は789隻が被害を受けた。知事は大型漁船の復旧に関し、国に対し新たな支援策の創設を提案すると答弁した。これによりどのような対応が可能となったのか。
高橋知事 激甚法など現行制度では対応が困難であり、国に対し大型漁船も対象とした新たな支援制度の創設を提案した。国は今回の補正予算で、激甚法で定める隻数やトン数の要件を撤廃し、中古船の購入も対象として高率補助が受けられる新制度を創設した。一日も早い操業の再開に向け、小型船については夏の盛漁期に間に合うよう、漁船の整備を早急に進める。

カキ稚貝確保をどう見込むのか

(3)養殖施設等の復旧対策について
松浦議員 予算案にはホタテなどの養殖施設やアサリ漁場の復旧に対する事業が含まれていないので、迅速な対応が求められる。宮城県の養殖施設が壊滅的な打撃を受けており、カキの稚貝の確保をどのように見込んでいるのか。
高橋知事 厚岸湖のアサリ漁場については、覆砂による漁場の再生について、国へ強く働きかけた。来年度以降のカキの種苗については、被災県に対する採苗用ホタテ貝殻の提供などを検討している。今後とも種苗の安定的な確保に向け、積極的に取り組む。

サンマ水揚げの減少に対応せよ

(4)サンマ加工原魚の確保対策について
松浦議員 今年のサンマ漁は、被害を受けた大型漁船の操業が事実上不可能になった。水揚港である道東地域では市場の取扱量が大きく減少すると見込まれ、水産加工業をはじめ関連産業への影響が懸念される。国は緊急にサンマ輸入枠を引き上げることにしたが、安定的な確保が望まれる。
高橋知事 道東地域では市場の取扱量が大幅に減少する見通しであり、水産加工業をはじめ地域経済への深刻な影響が懸念される。道漁連や北海道さんま漁業協会などと連携し、出漁日数を増やすなど操業体制を強化するとともに、燃油や氷など必要な資材を迅速に供給して道内港での受け入れ体制を強化し、加工原魚の確保に努める。北海道が食料供給基地としての使命をしっかり果たしていけるよう、積極的に取り組む。

道産農水産物の風評被害を懸念

(5)道産品の安心確保について
松浦議員 東京電力福島原発の事故で放射性物質が放出されたことで、道内でもモニタリングを継続的に実施した。現時点では異常は見られないが、風評被害が心配されることから、引き続きモニタリングを実施すべきだ。道産農水産物の安心確保に向け、今後どのように取り組んでいくのか。
高橋知事 今後とも農地や海水のモニタリング調査を継続するとともに、太平洋沖合を漁場とするサンマやイカ漁がはじまることから、水産物のモニタリング調査を実施し、道のホームページで公表するなど速やかな情報発信を行う。5月に訪問する中国はサケやホタテなど道産品の主要な輸出国であり、相手国に安全性や素晴らしさを積極的にアピールするなどして、道産の農水産物に対する不安の払しょくに全力を尽くす。

2、観光業への対応について

本道観光振興に取り組むべきだ

松浦議員 知事は5月22日から中国を訪問するが、現地での観光セミナーにとどまらず、本道に関係者を招へいするほか、本道に居住する中国の方々からの情報発信を働きかけるなど、本道観光の振興・復興に取り組むべきだ。
高橋知事 東日本大震災の影響で減少した本道観光客の回復を図るため、旅行需要の喚起に取り組む。国内向けには、今月中にも首都圏で新聞や雑誌広告のキャンペーンを展開し、夏の避暑地としての「クール北海道」のイメージ浸透を図る。
 外国人観光客の回復に向けては、四月に韓国、台湾に副知事を派遣した。中国に対しては私自身が訪れ、本道の安全性をPRする。海外の旅行会社・メディア関係者の招へい事業や、中国・韓国などの道内領事館や留学生の協力を得て、安全な北海道観光についての情報発信に取り組んでいる。

3、原子力発電などについて

エネルギー供給に対する考え方は

(1)本道のエネルギー供給のあり方について
松浦議員 政府は原子力発電を総発電量の50%まで拡大するとしているエネルギー基本計画を白紙に戻して検討するとの方針を示している。
 本道は原発が民生用電力発電量の40%程度を占め、新エネルギーの開発・実用化も数年のうちに実現するとはいえない現状を踏まえた時、エネルギー供給のあり方をどう考えているのか。
高橋知事 原子力発電は道内の電力供給の約四割を占めており、安全確保を最重点にエネルギーの安定供給の確保と地球温暖化防止などに向けた国の動きや総合的かつ国民的な議論を踏まえて対応する。本道に優位性のある自然エネルギーの開発・導入に積極的に取り組むなどして、生活や産業を支える安定的なエネルギーの供給が図られるように努める。

泊原発の再稼働をどう考えるのか

(2)泊発電所の対応について
松浦議員 道は北電が実施した泊発電所の緊急安全対策について、原子力安全・保安院から評価結果などの説明を聴取している。説明内容への対応や、定期点検中の泊発電所の再稼働についてどう考えているのか。
高橋知事 原子力安全・保安院からは妥当なものとの評価結果が出された。道は5月12日に地元4町村と安全協定に基づく立ち入り調査を行い、津波による電源喪失時における規程類の整備や各種機材の配備状況などを確認した。原発は何よりも安全性の確保が不可欠であり、万全を期す必要がある。学識者の助言を受けながら地元4町村との協議し、再稼働に関する考え方を整理する。

原子力防災計画は見直しが必要だ

(3)原子力防災計画の見直しについて
松浦議員 福島第一原発の事故を踏まえ、原子力防災対策を重点的に充実すべき地域、いわゆるEPZの範囲をはじめ、避難経路の確保、避難施設・放射線測定設備・原子力防災センターの設置場所など全般的な見直しが求められる。いつまでに行うのか。
高橋知事 国が事故の詳細をしっかり検証し、防災計画やEPZを含む原子力防災指針を早期に見直すよう要望してきた。道独自に、学識者による専門委員会を5月24日に設置し、住民避難の
範囲や方法、オフサイトセンターのあり方など、様々な課題を抽出し、論点整理を進める。国の防災指針の策定状況に合わせ、速やかに原子力防災計画を見直す。