●平成26年第3回定例道議会自民党・道民会議代表質問答弁要旨

自民党・道民会議 大谷 亨 議員

tanaka
警戒区域指定や避難勧告

土砂災害対応で知事に決断促す

昭和22年十勝管内芽室町生まれ。帯広畜産大学卒業。芽室町議会議員を経て、平成11年北海道議会議員初当選。現在4期目。この間、道議会農務委員長、同自民党・道民会議議員会副会長、自民党道連幹事長代理など歴任。現在、自民党道連政務調査会長、同財務委員会委員、道議会水産林務常任委員、同北方領土対策特別委員。

 平成26年第3回定例道議会が9月2日から10月3日まで開かれた。9月12日の本会議で、自民党・道民会議の大谷亨議員(十勝総合振興局管内選出)が代表質問に立ち、知事の政治姿勢、道政上の諸課題、教育問題、公安問題の4分野について、数多くの問題・課題を取り上げて鋭く追及した。特に全国・全道で多発し、甚大・深刻な被害を出した土砂災害などへの対応について、警戒区域の指定や避難勧告などの判断・伝達に関連して知事の決断を促したのに対し、高橋はるみ知事は道民の安全・安心確保、市町村の支援に全力で努める考えを示した。

tanaka

人口減少問題の具体的方向性を示せ

一、知事の政治姿勢について

①道に対する道民の意識について

大谷議員 道庁について「存在感を感じない」とする道民が80%もいるという。
特に若年層に多い。知事は、地域訪問などに積極的に取り組んでいるが、こうした道民の評価を、どう受け止めているか。

高橋知事 道政の重要課題に取り組むに当たって、市長会、町村会との連携の強化と効果的な施策の展開を図るほか、市町村長や地域住民と直接話し合う機会をより大切にしたい。

②人口減少問題について
(1)人口減少問題への取り組みについて

①取り組みの状況について

大谷議員 道政の最重要課題である人口減少問題への取り組みの現状を、どう受け止めているのか。また、知事が考える対応の方向性はどのようなものなのか。

高橋知事 私をトップとする対策本部を設置するなど、全庁体制をさらに強化し、雇用の場と安定的な所得の確保や医療・福祉サービスの向上、教育の振興に努め、安心して子どもを生み育てられる環境づくりなど総合的対策の構築に力を尽くしたい。

②今後の取り組みについて

大谷議員 国は来年度予算の概算要求基準において、人口減少問題などへの対応に優先基準を設けている。道として国の措置を積極的に活用するよう取り組んでいく必要があるが、どうか。

高橋知事 国の「まち・ひと・しごと創生本部」の取り組みに的確に対応した施策の展開について、国の施策を効果的に活用したい。今年度策定する総合的な取組指針では、次年度以降の施策についても検討し、少子化対策や経済・雇用対策の中でも優先的に取り組むべき施策は来年度中に実施したい。

国・道は組織、機能の分散化を進めよ

(2)人口の一極集中への対応について

大谷議員 人口の一極集中は、道や国がその組織・機能の分散化に取り組む決意を持たなければ、解決の糸口が見つからない。どう取り組む考えか。

高橋知事 国にバックアップ拠点としての本道の優位性を訴え、生産施設や本社機能などの地方分散を積極的に提案する。道内では地域づくりの拠点・振興局の機能強化を図る。地域資源を活用した地場産業の振興や雇用の確保、地域特性に応じた生活環境の整備などのほか、札幌市と生産地との連携強化や、地域の出生率向上に向けた取り組みなど一極集中の問題に関する総合的な対応策を展開する。

(3)広域連携について

大谷議員 本道は急速な人口減少で、消滅の可能性がある自治体は約8割に達している。市町村相互や道と市町村の連携をどのように図るのか。国の広域連携構想をどう受け止め、本道の広域連携をどう目指すのか。

高橋知事 市町村と十分協議し、定住自立圏構想の積極的な活用を促し、国にも中心市要件の緩和を働きかける。また、道内全ての地域で、市町村の広域連携に向けた取り組みを促進する。

(4)市町村財政について

大谷議員 人口減少が進む中、市町村財政を支える仕組みをどう整えていく考えか。

高井副知事 地方交付税などの一般財源総額の確保について、今後とも国に強く要望していく。

(5)地方経済対策について

大谷議員 地域経済対策プラットホーム形成推進事業による地域経済活性化案の作成に当たり、経済・雇用分野に関する人口減少問題にどう対応するか。

高橋知事 地域資源を生かした産業振興や市場開拓、雇用創出など必要な対策を構築、国への提案や道の活性化策に反映する。

人手不足、ミスマッチにどう対応?

(6)働く人の確保について

大谷議員 人手不足、求人・求職者のミスマッチや、人口減少社会における働く人の確保にどう取り組むか。

高橋知事 雇用の場の確保、働きやすい環境整備に努め、職業観の醸成を図るなど多様な人材が、意欲的に能力を発揮できる全員参加型社会の実現に努める。

立川教育長 産業教育審議会の審議経過を踏まえ、本道産業の実態に応じた教育内容の改善に努め、人材育成に取り組む。

(7)地域交通について

大谷議員 日常生活を支える基盤である地域交通の確保・維持にどう取り組んでいく考えか。

高橋知事 デマンドバスや乗合タクシーなど住民の生活を支える安全・安心な地域交通の確保に努め、急速な人口減少に対応した施策の充実を国に求めていく。関係機関と連携し、地域の実情や利用者のニーズに応じたきめ細かな取り組みを促進する。

(8)農業・農村の振興について

大谷議員 生産性が高く、需給構造の変化に対応した本道農業の確立とともに、農家が暮らし続けることができる地域の構築が求められている。農業の振興にどう取り組んでいく考えか。

高橋知事 生産力の強化、販路の拡大、6次産業化とともに、魅力ある住み良い農村生活環境の整備、意欲の高い人材の育成・確保など農業の持続的な発展と活力に満ちた農村づくりに向け市町村・関係団体と連携し、各般の施策を一層推進していく。

(9)振興局の体制強化について

大谷議員 振興局の体制強化に向け、人事や市町村への人的支援を見直すべきではないか。

高橋知事 適材適所を基本に、より地域事情に通じた職員を育成・活用するよう人事のあり方を再検討したい。市町村への職員派遣は、新興局長の裁量が十分発揮される仕組みを検討する。

③電力供給について

大谷議員 北電が値上げを申請しているが、電力は安定供給と経済的価格による供給が欠かせない。原子力発電を含めた当面の対応について見解を伺いたい。

高橋知事 北電に対し供給力確保と一層の経営努力を求めるとともに、国に厳正な審査と影響緩和策の検討、本道の実情に配慮した電力基盤の整備を要請した。道は追加経済対策など産業への影響緩和と当面の需給ひっ迫回避に向け全力で対処する。

④泊発電所の再稼働に向けた対応について

大谷議員 原発の安全性に関する道民の理解を得るため、泊発電所から半径30㎞圏内を含む後志総合振興局管内自治体を対象に、規制委員会の地元説明会を開催すべきと考えるが、どうか。

高橋知事 国が具体的なプログラムを明確に示すよう、引き続き強く求めていく。泊発電所については規制基準への適合性審査が継続されている。審査結果は規制委員会自らが責任を持って説明するよう強く求めている。

各地域の観光振興支援が不十分だ

二、道政上の諸課題について

①観光振興について

大谷議員 観光振興機構が新体制となり動き出したが、市町村や地域観光協会から「支援が不十分」という声が上がっている。
観光振興にどう取り組むのか。

山谷副知事 関係者との意見交換会で聴いた意見を道の施策にしっかりと反映していく。また、観光のくにづくり行動計画の達成に向け、地域の資源を生かした質の高い滞在型の観光地づくりに関係者と一体で取り組む。

②建設業の振興について

大谷議員 地域の安全・安心を確保していくため、建設業の現状と役割についてどう認識し、建設業の振興に必要な事業量をどう確保していく考えか。

高橋知事 長期的な視点に立ち、国土強靭化やインフラ長寿命化計画策定に当たる。必要な国の予算はもちろん、道単独費も含め安定的な公共事業予算の確保に努め、持続的な発展を図る。

③土砂災害などへの対応について
(1)土砂災害警戒区域の指定について

大谷議員 安倍総理は、都道府県の土砂災害警戒区域指定を促進するため、土砂災害防止法を改正する方針でいるが、道としてどのように取り組む考えか。

高橋知事 未調査箇所の解消に向け基礎調査を積極的に進め、早期区域指定に取り組む。さらに土砂災害対策を推進し、道民の安全・安心を確保したい。

(2)避難勧告などの判断・伝達について

大谷議員 避難勧告など自治体の基準作成に関し、どのように自治体を支援していくのか。

高橋知事 緊急会議を開催し、避難勧告などの重要性を徹底する。防災担当職員が直接市町村に赴き、課題の把握、地域の実情に応じた発令基準の策定など、避難対策を積極的に支援する。

④飲酒運転根絶に向けた取り組みについて

大谷議員 小樽市の飲酒運転事故で、人を死傷させた加害者が、危険運転致死傷罪に問われないのは問題。法改正の対応が必要と考える。また、道は飲酒運転根絶のため、今後どのように取り組む方針か。

高橋知事 国に法規制の一層の充実を求める。道として緊急に交通安全対策七者連絡会議を開催し、集中的な取り締まりや啓発活動の強化を図る。今後、関係機関・団体と連携し、より効果的な取り組みを検討する。

⑤保健福祉問題について
(1)難病及び小児慢性特定疾患対策について

大谷議員 「難病の患者に対する医療等に関する法律」「改正児童福祉法」が成立したが、難病・小児慢性特定疾患に関する課題の解決に向け、どう取り組むか。道単独の医療費助成の取り扱いについても見解を伺う。

高橋知事 患者・有識者の皆さんの意見を聴きながら、道単独助成制度も含め、必要な見直しを行うなど、その充実に努める。

(2)子どもの貧困率について

大谷議員 「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の制定に基づき、貧困対策大綱が策定された。
本道は一人親世帯の割合が全国平均より高い。雇用・保育・学習支援につき、実態に即した手厚い支援策が必要である。

高橋知事 教育や生活、就労など貧困の改善対策に積極的に取り組む。子どもの貧困対策に総合的な施策を盛り込んだ計画を早期に策定する。

(3)看護師の確保について

大谷議員 看護師不足を解消するためにどう対応するのか。道自らの責任で、看護師養成に取り組むべきと考えるがどうか。

高橋知事 今年度から新たに特別修学資金を創設した。看護師等養成施設の支援に向けても、施設整備・運営への助成や教員・学習指導者の養成に努める。

(4)道立病院の経営改善について

大谷議員 道立病院事業の経営状況をどう認識しているか。
事業立て直しにどう取り組むのか。

高橋知事 新・北海道病院改革プランに基づき、経営改善を進めている。環境変化に柔軟・迅速に対応できる経営体制・経営形態のあり方についても具体的に検討する。

日本海漁業振興へ栽培漁業の導入を

⑥新規就農者の確保について

大谷議員 本道農業の貴重な担い手となる新規就農者の確保に向け、どのように取り組むのか。

荒川副知事 担い手センターや市町村と連携を強めながら、就農セミナー参加者に継続的な情報提供を行う。就農しやすい環境づくりに努めるなど担い手の育成・確保に重点的に取り組む。

⑦日本海漁業の振興について

大谷議員 厳しい環境の日本海漁業は、栽培漁業の振興を図る必要がある。見解を伺いたい。

高橋知事 年内をめどに、日本海漁業振興基本方針を策定し、課題となっている養殖、ナマコの種苗放流といった栽培漁業を主体とした新たな生産体制づくりを急ぐなど、経営安定につながる即効性のある対策を実行する。

⑧木質バイオマスの活用について
(1)路網の整備について

大谷議員 木質バイオマスの活用問題に関連し、課題となっている林地残材の運び出しのため、林道の整備にどう取り組むのか。

荒川副知事 林道専用道の整備を進めているが、今後も森林内の路網整備に努める。

(2)計画的な事業展開について

大谷議員 長期的な視点に立ち、木質バイオマスの安定的供給体制の整備が必要ではないか。

高橋知事 国や市町村と連携し、計画的伐採や植林とともに、木材搬出システムの確立など安定供給体制の構築に努める。

北教組議案書の誤記問題を追及

三、教育問題について

①全国学力・学習状況調査について

大谷議員 全国学力・学習状況調査の今年度結果をどう受け止めたか。調査結果の公表についてどのように考えているか。

立川教育長 改善の傾向が見られるが、「平成26年度全国平均以上」という目標は達成できなかった。27年度までに全ての教科で全国平均以上、29年度には全ての管内で全国平均以上となるよう学力向上に努める。結果の公表については、国の実施要領に基づき、市町村教委の同意を前提として、市町村別の結果や改善方策を掲載するなど、一層きめ細かく分かりやすい調査結果を示す考えである。

②北教組の活動について

大谷議員 今年度の北教組定期大会議案書に、事実と異なる内容や法令に違反するような記載はなかったか。もし、事実であれば、毅然として対応すべきだ。

立川教育長 長期休業中の勤務取り扱いや主任制度などに関して、昨年度と同様か類似した記述が11カ所もあった。新たに土曜授業に関わる勤務時間の振り替えについても2カ所の誤った記述が分かった。今後、速やかに厳重抗議するとともに、毅然として是正を申し入れる。

特殊詐欺の根絶へどう取り組むか

四、公安問題について

①特殊詐欺について

大谷議員 被害者の多くは高齢者であり、詐欺の手口は年々巧妙化している。特殊詐欺の根絶に向け、どのように取り組むか。

室城道警本部長 検挙活動、広報啓発活動、防犯指導、金融機関と連携した水際阻止などの被害防止対策を推進する。今年10月に設定した「特殊詐欺撲滅のための取り締まり活動及び予防活動の強化推進期間」による集中的な取り組みを実施する。

②交通死亡事故抑止対策について

大谷議員 交通事故死亡者を1人でも減らすため、交通死亡事故抑止対策をどう進める考えか。

室城道警本部長 交通違反の取り締まりと併せ、赤色灯パトカーによる警戒活動のほか、高齢歩行者に対する安全指導、地域の人たちと連携した高齢者宅訪問活動、交通安全ひと声運動などを実施する。また、事業所、町内会などに対して、交通安全情報を一斉配信する活動も引き続き推進する。

③道民の安全・安心の確保について

大谷議員 道警の取り締まりについて「犯罪や事故のない安心して暮らせる北海道の実現。これに尽きる」としているが、具体的にどのように取り組むのか。

室城道警本部長 実態に即した取り締まりや関係機関・団体と連携した抑止活動を積極的に推進する。災害や重大な事件に対して迅速・的確に初動対応ができるよう能力向上に努め、有事即応体制を確立する。道警職員が一丸となり、犯罪や事故のない安心して暮らせる北海道の実現という基本理念を達成したい。

 

指 摘

一、人口減少問題への取り組みについて

大谷議員 知事は人口減少問題に対する思いを自らの言葉で語りかけ、道民と共に行動し、強い意志と明確な方向性を持って取り組むよう強く求める。

二、地域経済対策について

大谷議員 地域のすみずみまで足を運び、さまざまな声に耳を傾け、緊急課題に対応すべきである。中長期的課題については、活性化案が決して屋上屋にならないよう、既存の計画などと整合性を十分に図り、人口減少問題を踏まえた具体的で有効な対策を早期に構築し、切れ目のない対策を講じるべきである。

三、電力供給について

大谷議員 電力が経済的な価格で安定的に供給されるよう、知事はできるだけ早期に原子力発電を含めた電力供給に関する見解を明らかにし、北海道経済の立て直しのめどを示すべきだ。

四、看護師の確保について

大谷議員 学生を支援する特別修学資金を創設したことは高く評価している。看護師不足が厳しい状況にあることから、看護師養成に取り組むとともに、地域で必要な看護師の確保に積極的に取り組むよう期待する。

自民党・道民会議一般質問項目

○佐藤禎洋議員(小樽市)
  1. 子育ての環境づくりについて
  2. タイ政府観光庁との連携について
  3. 空き家・空き店舗対策について
  4. 小規模企業の振興について
  5. 日本海漁業の振興について
○梅尾要一議員(千歳市)
  1. 自衛隊との災害対処合同訓練について
  2. 米軍のオスプレイ訓練移転などについて
  3. 新千歳空港24時間運用について
  4. 道立高校の授業における集団的自衛権の取り扱いについて
○中野秀敏議員(名寄市)
  1. 農業政策について
  2. 食クラスターについて
  3. 高校における職業教育について
  4. 中学校夜間学級について
○𠮷川隆雅議員(札幌市北区)
  1. 若年世代の社会参画について
  2. 観光について
  3. クール・HOKKAIDOについて
  4. 地域商業の振興について
  5. 食にかかわる施策展開について
  6. IT利活用について
  7. 学力向上について
○花崎 勝議員(札幌市厚別区)
  1. 地球温暖化防止対策などについて
  2. 災害廃棄物処理について
  3. 児童養護施設で暮らす子どもの進学対策について
  4. 性同一性障害について
○藤沢澄雄議員(日高管内)
  1. アイヌ政策について
  2. 女性の積極登用について
  3. 認定こども園について
  4. 学力向上について
○松浦宗信議員(根室市)
  1. 移住政策について
  2. 広域連携と振興局の役割について
  3. 道の財源確保について
  4. 周産期医療体制について
  5. 秋サケ資源について
○角谷隆司議員(札幌市手稲区)
  1. 札幌市との連携について
  2. 次代の親づくりについて
  3. 第4期北海道障がい福祉計画について
  4. 海外との経済交流の拡大について
  5. ミラノ万博について
  6. IRについて
○石塚正寛議員(留萌市)
  1. 道庁本庁舎改修工事について
  2. 市町村との連携について
  3. 食関連産業の推進について
  4. 日本海漁業振興について
  5. 物流コスト高騰対策について
  6. 道民の安全・安心の確保について
○小松 茂議員(釧路管内)
  1. 退職自衛官の任用形態について
  2. 改正鳥獣保護法における新たな認定鳥獣捕獲等事業者制度について
  3. 海洋環境の変化に対応した漁業振興について
○千葉英守議員(札幌市中央区)
  1. 道産水産加工品の国際参入について
  2. 外国人留学生への支援について
  3. 石狩湾新港について
  4. 児童養護施設の子ども