●2014年第1回定例道議会 自民党・道民会議 代表質問・答弁要旨
自民党・道民会議 中司 哲雄 議員
道内経済再生へ迅速な対応策を求める
1947年中標津町生まれ。中標津高校、北海道大学農学部畜産学科卒業。中標津町農協副組合長を経て、2003年道議会議員に初当選。3期目。現在、道議会総合政策常任委員、同北方領土対策特別委員、道議会自民党・道民会議政策審議委員長、自民党道連総務副会長、同政務調査会副会長、同北方領土・アイヌ対策調査会幹事長。
2014年第1回定例道議会は2月19日招集され、14年度一般会計予算案など、159件を審議した。同27日には、自民党・道民会議から中司哲雄議員(根室振興局選出)が代表質問に立ち、経済、エネルギー、TPP、防災、交通ネットワーク、農林水産業、北方領土、地域医療、教育、公安問題など、多岐にわたる重要課題について道の見解をただした。
中司議員 知事は執行方針の中で、景気の波を全道に押し広げていくことが重要であるとし、道内各地のさまざまな挑戦を飛躍させて新たな発展につなげていくとした。魅力あふれる北海道の実現に向け、将来を見据えた一歩をどう踏み出そうとしているのか。
高橋知事 食品機能性表示制度や6次産業化などによる食産業立国の推進、世界に誇れる観光のくにづくりなどを重点的に進めていく。また、人口減少・高齢化の進行を踏まえ、地域医療の充実、交通ネットワークの維持など、将来にわたり持続的に発展できるよう全力で取り組んでまいりたい。
中司議員 知事はエネルギーは暮らしと経済の基盤であり、安定した電力需給が重要であるとの見解を示した。原子力発電が果たしてきた役割、必要性をどう認識しているのか。
高橋知事 原子力発電が大きな割合を占める中で、電力の安定供給と経済性が確保されてきた。今後も安定性、経済性、環境負荷の低減を基本的な視点として、エネルギーの多様化や安定供給が必要と考える。
中司議員 新エネルギー拡大への道民や経済界の理解が得られるよう、導入コストなどに関する情報をわかりやすく提供すべきではないか。
高橋知事 新エネルギーは出力の安定性やコストが課題であり、情報提供の方法を工夫しながら道民や企業の理解を得て導入を促進していく。
中司議員 道は2020年度における温室効果ガスの排出量を738万トン削減する目標を掲げている。排出量に大きな影響を及ぼす原子力発電について、どう認識しているのか。
高橋知事 原子力発電は二酸化炭素を排出しないことから地球温暖化対策の1つとされてきたが、何よりも安全性の確保が最優先である。省エネキャンペーンやセミナーを通じて、家庭における二酸化炭素の削減に積極的に取り組んでいく。
中司議員 原子力規制委員会が進める審査状況をどう受け止め、どのような手続きで進められることを望んでいるのか。
高橋知事 原子力規制委員会が責任を持って説明するとともに、疑問に答える窓口を設置するなど、幅広い理解促進に努めていただく必要がある。
中司議員 国のエネルギー基本計画を踏まえ、国に責任ある対応を求めるべきではないか。
高橋知事 原子力発電所の再稼働については、安全性や必要性を十分考慮した上で国が責任を持って判断し、国民や関係自治体に丁寧な説明をするよう求めている。
中司議員 2011年度の総生産は03年度に比べ92.2の水準で、低下傾向で、建設業は公共事業の落ち込みを反映して69.3と大きく下がった。知事が取り組んできた民間主導の自立型経済への転換などの政策は、どんな効果をもたらしたのか。
高橋知事 自動車部品や加工食品の輸出額増加、外国人来道者の増加など、これまでの地道な取り組みが徐々に実を結んできている。自立型経済構造の実現を目指してさらに取り組んでいく。
中司議員 消費税率の引き上げが経済の回復基調に水を差さないよう迅速な対応が求められる。経済政策にどう取り組むか。
高橋知事 中小企業の競争力強化、ものづくり産業の振興、食や観光の成長力強化、人づくりの推進、生産現場への女性参画の促進などを進め、経済の好循環に向けて全庁をあげて取り組んでいく。
中司議員 本道を訪れる観光客の購買力は経済の底上げに大きく寄与する。4月以降、観光客誘致にどう取り組むのか。
高橋知事 購買意欲の旺盛な女性客を念頭に、道産食品や旅行商品を提案する。
中司議員 道庁組織の適正規模を維持するためには、引き続き行財政改革に取り組むとともに、歳入確保を目指した運営が必要である。どう取り組むのか。
高橋知事 農林水産業の競争力強化、観光やものづくり産業の振興などを図り、本道経済の活性化を税収増につなげていくことが重要と考えている。
中司議員 わが国は閣僚会合に、重要5品目の一部については譲歩もあるとの方針で臨んだが決着を見なかった。これをどう受け止めているのか。
高橋知事 昨年4月の国会決議を踏まえ、重要品目の関税を維持するなど、万全な対応を強く求めてまいる。
中司議員 TPP交渉がどのようになろうと、本道の農林水産業を持続的に発展させ、次世代に継承していくことが重要である。どう取り組むのか。
高井副知事 農業生産基盤の整備、栽培漁業の推進、森林資源の活用を図るとともに、農業の6次産業化や食品機能性表示制度の普及、HACCP導入による水産物の輸出促進などに取り組む。
中司議員 食関連産業を本道経済の柱とするために、道としてどう取り組んでいくのか。
高橋知事 食品機能性表示制度の普及や薬用作物の生産など、成長が期待される分野への集中的な展開を図る。海外への販路拡大を進めるため、空港・港湾の機能強化や物流ネットワークの形成にも努めていく。
中司議員 道や開発局が進める「北海道国際輸送プラットホーム」は、道内から台湾、香港、シンガポールの家庭や店舗へ、段ボール1個でも送ることができるサービスを実施している。どう連携を図っていくか。
高井副知事 国の出先機関、ジェトロ、市町村、金融機関などと共同で海外事業の開催などの連携を進めており、オール北海道体制で海外市場の成長力を取り込んでいく。
中司議員 わが国の経済活動のバックアップ拠点を担う観点から、本社機能や研究開発機能、データセンターなどの企業誘致に力点をおくべきだと考えるが、どう進めていくのか。
高橋知事 産業振興条例の助成対象に植物工場や本社機能の移転を新たに加えるほか、雪氷エネルギーを使ったデータセンター、地元産品を原料とする工場など、地域特性に応じた誘致活動を展開していく。
中司議員 観光振興は道庁内はもとより観光振興機構、国、市町村、地域の観光協会がそれぞれ事業を展開している。どう連携していくのか。
高橋知事 地域づくり連携会議などの場を活用して関係機関と情報共有を図り、効果的・効率的に事業を進めるよう努める。
中司議員 後志管内古平町の水産加工業協同組合と加盟企業数社が破産すると伝えられている。破産企業には地元の就業人口の約1割にあたる160人が雇用されており、すみやかに対応すべきではないか。
高橋知事 地元やハローワーク、金融機関などと連携し、影響を最小限に食い止め、地域の方々の不安解消や存続企業の経済の安定に万全を期してまいる。
中司議員 道は改正耐震改修促進法で義務化された大規模建築物の耐震診断に対して支援を行うとしているが、改修経費、改修中の運転経費はどう対応するのか。
高井副知事 補助制度、融資制度などの支援策に関する説明会で積極的な活用を働きかけ、地域経済への影響が軽減されるよう適切に対応する。
中司議員 昨年12月の臨時国会で、国土強靭化基本法が成立した。本道は大災害時のバックアップ拠点の役割を担うための取り組みを進めているが、必要な施策を予算に反映させていくことが重要ではないか。
高橋知事 5月をめどとする国の基本計画等の策定に向けて、地域の声を踏まえ、本道の特製に応じた地域計画を早期に策定する。
中司議員 物流の効率化、高度医療施設へのアクセス向上の観点から、インターチェンジの設置などの機能充実に取り組む必要がある。特に苫小牧にはアクセス改善を期待する要望が出されているが、どう取り組むか。
高橋知事 ネットワークの早期形成に向け、国や関係機関などへ強く働きかけていく。苫小牧については地元の思いを重く受け止め、早期に検討していく。
中司議員 今年度中にHACの債務超過を解消するには、今定例会での議決や他の株主との協議も必要である。JALグループへの復帰に向けて、どう取り組んでいくのか。
高橋知事 年度内の解消に向けて必要な追加提案をさせていただく。出資比率のあり方について専門家の意見を伺いながら検討し、引き続きJALと協議を行っていく。
中司議員 JR北海道の再生に向けて、同社や国に対して何を求めていく考えなのか。
高橋知事 道民生活と道内企業を支える会社として一日も早く信頼を回復し、再生してもらいたいと考えている。国に対し、安全確保に必要な設備投資に対する支援を要請していく。
中司議員 知事は、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて北海道を売り込む「北のTOPプロジェクト」に取り組む考えを明らかにした。どう進めるのか。
高橋知事 事前合宿、観光客誘致、道産品のPRなど、北海道の魅力を総合的に発信していくほか、スポーツ振興、海外交流、バリアフリー化などが進むよう検討を深めていく。
中司議員 安倍総理はプーチン大統領との会談を重ね、領土交渉に入る雰囲気づくりに取り組んでいる。解決に向けて大きく踏み出せるよう道内全域で運動を盛り上げていくべきではないか。
高橋知事 今年を正念場と捉え、さまざまな機会を活用して広く道民・国民に訴えかけるとともに、若い世代に向けた取り組みの強化を図っていく。
中司議員 野生鳥獣による被害が全国で激増していることを受け、国は防止を図るため改正法案を今国会に提出予定である。夜間の猟銃使用、ワナ免許可能年齢の引き下げなどが盛り込まれるが、関係機関と対応を協議するべきではないか。
高橋知事 道警、市町村、猟友会などの関係機関との情報共有を図りながら、効率的、効果的な捕獲体制の構築に向けて準備を進めていく。
中司議員 08年度から実施している地域枠医師第1期の学生7人が今年度卒業する。この仕組みを活用し、計画的な医師確保に取り組むべきと考えるが、見解を伺う。
高橋知事 新年度に医育大学や市町村、医師会等で構成する検討委員会を設置し、医師としてのキャリア形成にも配慮した配置先の決定システムを検討する。
中司議員 急な医師の欠員により、都市部の病院への医師派遣要請が多発している。医師不足に悩む地域に対し、即効性のある対策を進めるべきではないか。
高橋知事 道医師会と連携し、道内医師を対象に「地域医療支援に関する意向調査」を実施し、支援の充実に取り組む。
中司議員 すべての総合内科医養成センターで、総合診療医を送り出す体制を整備すべきと考えるが、どう取り組むのか。
高井副知事 各センターの研修プログラムを道内外の医育大学に周知して後期研修医の確保に努めるとともに、医師不足地域での勤務に向けたモデル事業を実施する。
中司議員 発達障害の子どもの外来診療が数年で2倍に増加し、老朽化も進んでいる。施設機能の充実を求める請願を議会で採決したが、どう対応するのか。
高橋知事 有識者や関係団体の意見を踏まえ、必要な機能や整備の方向性を示す方針を早期に策定し、取り組みを進めていく。
中司議員 農業・農村全体の所得を10年間で倍増させる、国の「農林水産業・地域の活力創造プラン」をどう活用するのか。
高橋知事 担い手の育成、農地の集約化、生産基盤の整備、6次産業化などにより地域の活性化が図られるように全力を傾けていく。
中司議員 天候不順などの影響で牛乳生産量が伸び悩んでいる。本道の酪農業は高齢化や経営不振による離農者も多い一方で、将来への不安や投資額が大きいことなどから新規入植者数が増えないという構造になっている。どう対応していくか。
高橋知事 来年度から酪農ヘルパーの就農支援、地域営農システムの確立、大型法人経営の育成、自給飼料の生産拡大など、生産基盤の強化に努めている。
中司議員 トドやアザラシによる漁業被害を軽減するため、合理的な捕獲枠の設定、被害に対する補償制度の創設、ハンター養成などの対策を講ずるべきではないか。
高橋知事 ゼニガタアザラシ捕獲を含めた国の保護管理計画の策定を求めるとともに、トドの集中駆除やハンター育成、強化網の導入などの支援をしている。捕獲枠拡大や補償については関係団体と連携を一層強化していく。
中司議員 道は漁船更新のための融資制度を新年度予算に盛り込んだが、新たな支援制度を活用できるように指導・調整を行うべきではないか。
高井副知事 地域ごとに市町村、漁協等で構成する委員会を設置し「浜の活力再生プラン」を策定する必要があり、指導や融資制度の拡充などを行っていく。
中司議員 強度に優れたCLT(集成材パネル)を活用するための具体的な取り組みを進めるべきではないか。
高橋知事 国の法令整備に先駆け、新年度に研究会を設立し、CLTを使った建物を建設するなどの実証的な取り組みを進める。
中司議員 中央教育審議会は昨年12月、教育委員会制度を現在の制度のままとする答申を行った。制度のあり方については賛否それぞれの意見があるが、議論が起きた背景をどう認識しているのか。
高橋知事 これまでも意思決定に係る迅速性の欠如や審議の形骸化などが指摘されていたが、児童生徒の生命・身体を脅かす重大事案の発生、いじめ問題への対応などをめぐり抜本的な改革に向けて議論が行われているものと認識している。
中司議員 全国学力テストの結果では依然として厳しい状況にある。学力向上に向け、どう取り組む考えなのか。
立川教育長 授業改善の指導を行う専門家の派遣、長期休業を活用した学習・運動習慣定着の取り組み、学校の総合力を高める取り組みなど、学習環境づくりを積極的に進めていく。
中司議員 今定例会に「北海道いじめの防止等に関する条例」案が提出されている。いじめの防止のためには道教委が人事をはじめ必要な支援を惜しまないことが必要だと考えるが、見解を伺う。
立川教育長 条例制定を契機として、いじめの未然防止策を体系化したプログラムを作成するほか、適切に対処できる人材を配置するなど全力で取り組んでいく。
中司議員 道内の私立学校の耐震改修率は70.5% で、全国平均を大きく下回る。耐震改修費用は経営が厳しい私学にとって負担が大きく、何らかの支援策が必要ではないか。
高橋知事 来年度に創設する耐震診断への補助制度を活用するよう促すとともに、国に対しても改修費用の補助率引き上げなどを要請していく。
中司議員 1月には、札幌で小3女児が連れ去られるという重大事件が発生した。犯罪や事故のない安心して暮らせる北海道の実現に向けて、どう取り組んでいくのか。
坂警察本部長 昨年は道内の刑法犯の認知件数や交通事故者数が減少した一方で、特殊詐欺の被害総額は過去最高となり、子ども・女性が被害者となる事件も増加した。道警ではストーカー、DV事案をはじめ多様な分野で女性警察官の採用・登用を進め、道民が望む警察活動に努めていく。
知事はエネルギーの多様化とともに安定的な電力供給が必要であるとの基本的視点を明らかにしたが、エネルギー政策は地球温暖化対策と密接な関連があり、整合性を図りながら推進していくよう求める。
ホテル、旅館、商業施設での耐震度不足は風評被害を招きかねず、耐震診断結果の公表時には改修が終わっていることが最善である。改修工事への具体的な支援を早急に検討するべきだ。
JALグループへの復帰の前提となる債務超過の解消などについて、時期を逸することなく対応するよう求める。
今後、人口減少が予想される中、道民生活の基盤である鉄道を、交通ネットワークにどう位置づけるのか検討を進める必要がある。
本道の実態に即した効果的な医師確保対策を講じ、医育大学関係者の理解と協力が得られるよう、積極的に取り組むべきである。
トドの被害が1つの漁協水揚げ額に匹敵するなど、深刻な報告もある。実効性のある対策が求められており、計画的な対応をすべきである。
自民党・道民会議一般質問項目